山村の活性化と排水処理

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稲作で築かれた水との深い関係

水環境を守るには水を汚さない、大切に使うといったことが当たり前になっています。さらに水源地域である山が大切な働きを持っていることも、いまでは常識とされています。山林を守り育てることは水環境保護に必要不可欠です。

水で結ばれている山村と都市

 緑の山肌がどこまでも続いています。よく見ると濃い緑色をした山もあれば、どちらかといえば黄緑色の山もあります。同じ斜面に濃い緑と淡い緑がまだら模様となった山もあります。
 かつて、日本では広葉樹から建築材料としての価値が高いスギやヒノキといった針葉樹に植え替えられて人工林と呼ばれる森が増えていきました。針葉樹も広葉樹もそれぞれ大切な役割を担っています。例えば針葉樹は山村にとって重要な産業である林業を育ててきました。
 広葉樹の森は多様な生物の生息場所を提供し、あるいは落ち葉の間から地中へと浸透した雨水が地中に含まれるミネラル分などを溶かし込み、それらの養分を川の水と共に下流へと運びます。栄養分豊かな水は川や海で魚介類や海藻を育てます。
 緑豊かな山は自然のダムとも言われるように、高い保水能力をもっています。日本の川が年間を通して涸れることなく流れているのは、山に降った雨や雪を蓄えてくれるからです。手入れが行き届かなくなり、山が荒れると、保水能力を失い下流の街や村に水害を引き起こしてしまいます。下流の都市へ水を供給する大切な働きも低下します。さらに上流域の水が汚れると下流域では安心して水が使えなくなってしまいます。下流域の街や村にとっても山林の整備は大変に重要です。山村で使用した生活排水で川が汚れないようにしなければなりませんが、起伏が多く人口密度の少ない山村での下水道はコストがかかり、なかなか整備が進まないのが実情です。

山林は緑のダムとも言われ、洪水を防ぎ、あるいは水を蓄えて渇水期にも水を供給してくれます。

国土面積の半分を占める山村

 山のことを一番詳しく知っているのは山で暮らす人達です。下流で暮らす人達が、なぜわざわざ山まで出かけて植栽などをおこなうのかといえば、山仕事をする人達が減り、山の手入れが行き届かなくなっているからです。
 戦後の日本は工業化によって著しい経済発展を遂げました。その経済成長を支えたのが農山村の労働力でした。
 山村は道路をはじめとしたインフラの未整備なところが多く、病院、学校、日常の食料品などの買い物をする場所が少なく、都市に比べて生活が不便でした。便利で快適な街での暮らしに憧れる人と多くの労働力を確保したい都市という構図の中で、高度経済成長のころから若年層を中心に山村からの人口流出が進みました。山村から働き手が少なくなる一方で、安い外国産の木材の輸入によって、特に林業によって成り立っていた山村は疲弊していきました。
 そこで昭和40年(1965年)に「山村の経済力の培養と住民の福祉向上を図り、地域格差の是正と経済の発展に寄与することを目的」にした山村振興法が制定されました。山村振興法に基づく「振興山村」と呼ばれる地域は、平成22年(2010年)4月現在、全国の1,719市町村の約4割に当たる735市町村が指定されています。そして735市町村の面積は国土面積の約5割、森林面積の約6割を占めています。振興山村というのは、面積の約8割が森林で、まとまった平地が少なく、農業や林業といった第一次産業に依存する割合が高い地域のことです。
 振興山村とはいわゆる山間地域のことです。平地での農業地域と山間地域との間を中間地域と呼ぶことがあります。中間地域は森林面積が50で、耕地は傾斜したところが多くなっています。この中間地域と山間地域を合わせて中山間地域と呼んでいます。

枝打ちや間伐などの手入れの行き届いた山は、林床にまで日が差し込みます。

急速に減少する日本の人口

 現在の日本の総人口は約1億2,600万人です。50年後には約8,700万人へ減少すると推測されています。単純計算をするだけでも、1年間で約80万人ずつ減っていくことになります。福井県の人口が約80万人ですから、毎年、日本から福井県分の人口が消えていくようなものです。今後人口が減り続け、1億人を割るのは35年後の平成60年(2048年)頃と予測されています。
 ところで、日本の人口が1億人を突破したのはいまから46年前の昭和42年(1967年)です。過去1,000万人を越えたとされているのは15世紀頃だとされています。そして、明治維新頃は約3,300万人でした。このように見ると、日本の人口が現在の半分になったとしても明治維新の頃よりも、まだ2倍も多いことになります。現代社会が抱えるエネルギーや食糧問題などは人口減少によって解決され、それほど心配をしなくてもいいようにも思えますが、問題は人口が減少するということだけではなく、世代間のバランスが崩れてしまうことです。社会の成長や発展を支えるのは若い世代です。高齢者が多い社会は、どうしても活力が損なわれがちになってしまいます。2060年には65歳以上の高齢者が日本の総人口に占める割合は約40%になると予測されています。

日本は国土の面積の約7割が森林で占められています。森林の管理が十分でなくなるということは、国土の多くの管理も十分におこなわれなくなるということです。

地方の農山村には廃屋となった人家が見られます。

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