地方都市における水環境の未来

水の話 No.165 特集 地方都市における水環境の未来 信濃川によってつくられた新潟平野

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美しい水と共に残しておきたい風景

 

川の中に大型の水鳥がいます。街の中心部からほど遠くはない場所です。
水のきれいな川が市街地を流れる地方都市はたくさんあります。
汚れた川をきれいにすることも大切ですが、汚れていない現状をいかにして未来へと引き継いでいくのかも大切です。

地域を越える環境問題

 高度経済成長をしていた1950年代から1960年代にかけて、日本各地で環境汚染、自然破壊が大きな社会問題となりました。そこで国は昭和42年(1967年)に公害対策基本法を制定し、公害防止に本格的な取り組みをはじめます。さらに昭和47年(1972年)には自然環境保全法を制定しました。
 ところが20世紀後半から新たな環境問題が顕著になってきます。それまでの環境問題といえば発生源がかなり限定されていました。発生源を突き止め、そこに規制をかけ、あるいは指導することで、公害の発生を抑えることが可能でしたが、発生源が複数となり、それらが複雑に絡み合うようになってきたのです。しかも、環境問題は国境を越えて地球規模で広がり、そこに資源問題も加わってきました。
 そうした中で平成4年(1992年)にブラジルで地球サミットが開催されました。従来の公害対策基本法や自然環境保全法の枠組だけでは問題の解決が難しくなってきたということもあって、平成5年(1993年)に、公害対策基本法に代り環境基本法が制定され、それに合わせて自然環境保全法も改正されました。

市民が大切にし、未来へ残したいとしている五十嵐川。

多くの自治体が取り組んでいる環境基本計画

 環境基本法に基づいて、国はこれまで数次にわたり、環境基本計画を策定し、平成24年(2012年)には新たに第4次環境基本計画を策定しています。環境基本法の基本理念は持続可能な社会の構築にあるとしています。また優先的に取り組む9つの重点分野の一つとして、水環境問題への取り組みを掲げています。そして水環境保全を進める時、単に問題の発生している地点に着目する「場の視点」から、流域全体を視野に入れた「流れの視点」での取り組みが重要だとしています。
 一方、都道府県や市町村に環境基本計画を策定する義務はありませんが、環境基本条例を制定し、環境基本計画を策定しているところが多く見られます。

多くの都市で、市街地を流れる中小河川は生活排水の放流先として使われてきました。その結果、埋め立てられてしまったり暗渠化された川もたくさんあります。これからの水環境のあり方を考えた時、川をどのように活かしていくのかが大切になってきます。

流れゆたけき信濃川

 現在の三条市は平成17年(2005年)に合併によって誕生し、その時に制定した市民憲章の中で「自然を愛し 川をきれいにし 緑を育みます」と謳っています。旧三条市は、平成16年(2004年)に環境基本計画を策定しています。新しい三条市の誕生に伴い、平成20年度(2008年度)から平成26年度(2014年度)を計画期間とした「つなげよう未来へ 豊かな自然と環境を創造するまち さんじょう」を目標に掲げた三条市環境基本計画を策定しました。もちろん、この地域で、これまでに目立った環境問題が発生したことはありません。
 三条市は江戸時代からの和釘づくりから金属加工都市として発展し、水と大地の恵みによる米どころともなっています。そして合併により、奥早出粟守門県立自然公園、越後三山只見国定公園、信濃川とその支流である五十嵐川、刈谷田川など豊かな水と大地に恵まれた市となりました。三条市歌の歌詞にも「長き平和の歴史に映えて 流れゆたけき信濃川」など、信濃川とともに生きてきた人々の心情が込められています。
 市域が大きく広がった三条市には商業や工業の集積する地域、農業地域、自然公園地域などさまざまな環境特性を持ったエリアが存在しています。しかし市街地の拡大に伴い里地里山や市街地周辺での農地が減少しつつあります。
 そうしたなかで、現在の計画の策定に当たり、市がおこなった市民意識調査によると、市の中心部を流れる清流五十嵐川を未来の世代に残したいという声が一番多くなっています。五十嵐川の上流域には白鳥も飛来します。

地方では当たり前の鎮守の杜も、都会では自然を残す貴重な場所となっています。里地里山、せせらぎなどと共に、大切に守り続けたいものです。

人と自然が調和するまちを目指す燕市

 三条市に隣接する燕市も、信濃川と共に歴史を刻み、金属加工の中でもハウスウエアが有名です。現在の燕市は平成18年(2006年)の合併で誕生し、その年に燕市環境基本条例を制定しています。さらに平成20年(2008年)に燕市総合計画を策定し、まちづくりの将来像として「人と自然と産業が調和し、進化する燕市」を掲げました。平成21年度(2009年度)から平成27年度(2015年度)を計画期間とする燕市環境基本計画は、市の将来像を環境面から実現していくための役割も担っています。
 燕市は西部の国上山周辺部を除くとほぼ平坦な地形です。市の中央部には新潟県下有数の工業地帯があり、市内には信濃川、大河津分水路、中ノ口川、西川、大通川などが流れています。

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