神話の森と日本一の清流

水の話 No.166 特集 神話の森と日本一の清流 伊勢神宮と宮川

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清浄なる流れを守る人々

かつて大杉谷から伐り出された遷宮用の御用材が筏に組まれ、澄んだ宮川を下りました。
あるいは炭やお茶、塩や反物などを載せて上り下りする舟が往き交うなど、宮川は地域の人々と密接にかかわってきました。
そして今、新しい川とのかかわり方への取り組みがおこなわれています。

水質がもっとも良好な一級河川は全国に約10河川

 宮川を橋の上から覗き込むと、川底の石まではっきりと分かります。青く透き通った部分はかなりの水深があるようですが、それでも、川の底まではっきりと見ることができます。
 国土交通省は毎年、全国一級河川の水質現況を発表しています。サケやアユが生息できる目安となるBOD値は3.0mg/ℓとされ、人の手が入っていない河川の平均的なBOD値は1.0mg/ℓ未満とされています。さらに年間の平均的なBOD値が0.5mg/ℓを最も良好な水質としています。
 国土交通省では全国の883地点で水質調査を実施していますが、BOD値1.0mg/ℓ未満は全体の約半数にあたる431地点を占めています。各調査地点の年間の平均的な水質が最も良好な河川は平成24年が9河川、平成25年が10河川でした。
 宮川の上流域にある大台町の人口は約1万人、町の面積は362.94㎢で、93%を森林が占めています。広大な森林に降った雨はいくつもの沢を作り、宮川へ流入します。
 宮川水系の水は大台町の簡易水道の水源となっている他、宮川からの伏流水や地下水は下流域の伊勢市の水道水源にもなっています。

宮川では本流のほか、いくつもの支流にアユやイワナ、アマゴなども生息しています。水が澄んでいるので目を凝らせば魚影も確認できます。(写真提供:リバーフィールド)

落差をつけて河川を浄化

 宮川の下流域には人口約13万人の伊勢市があります。勢田川は宮川と五十鈴川に挟まれた市街地を流れています。長さ6.9kmで勾配が緩く、河口付近で五十鈴川と合流します。かつては舟運で賑わい、獲れた魚を神宮へ献上していました。勢田川の流域には伊勢市の人口の約60%が居住しています。  勢田川は宮川や五十鈴川に比べ低い場所を流れています。そのため、市域の生活排水が勢田川へ集中してしまいます。さらに潮の干満がそのまま川の水位となって現れるほど川底が低いため、一度流れ込んだ汚れは、なかなか海へ出て行きません。平成5年(1993年)から、国は宮川の水を導水して浄化する事業を開始しましたが、川の形状から簡単には水質改善には繋がりません。平成10年度から平成20年度まで連続して三重県内水質ワースト1位となってしまいました。
 そこで流域の市民と伊勢市、県、国が協働して勢田川をきれいにするプロジェクトを立ち上げました。その活動の一つとして平成16年(2004年)に「勢田川とおりゃん瀬」と名付けた落差工の設置があります。河口から5.6kmの地点に長さ約20m、落差約1mの勾配をつけた人工の瀬で、川を歩いて渡れるように飛び石も配置しました。
 とおりゃん瀬に竹炭やカキ殻などを詰めた浄化材を投入し、飛び石の清掃をおこなうなど、勢田川は市民の手によって守られています。また多くの市民ボランティアを中心に水質調査や浄化のためのさまざまな活動に取り組んでいます。毎年7月には「勢田川七夕大そうじ」もおこなわれています。とおりゃん瀬の辺りでは魚影を見ることができ、水質の改善は少しずつ進んでいます。
 勢田川の汚れは大部分が生活排水 によるものです。つまり市民一人ひとりが をきれいにしようという意識を持つことで、川はきれいになるはずです。

左:伊勢市の中心部を流れる勢田川は地形の関係で生活排水が集中しやすいため、市民や行政によって、清掃活動がおこなわれています。勢田川七夕大そうじの後には川沿いにキャンドルを灯し、きれいになった勢田川を演出します。(写真提供:伊勢市環境会議)

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