東の空が少しずつ明るさを増していき、夜の闇に溶け込んでいた湖面が目の前に広がります。対岸の奥に見える山との境もはっきりと確認できるようになってきます。遠くにひと際目立つ山が姿を現しました。磐梯山です。
磐梯山は数十万年前から噴火を繰り返しながら形成された火山です。火山は地下のマグマの上昇や噴出によって成長していきますが、地震や火山活動によってしばしば山崩れを起こして姿を変えていきます。磐梯山の標高は1,819mですが、数万年前までは富士山よりも高い山だったといわれています。頂上は一つだけではなく、いくつもの峰によって形づくられていました。
猪苗代湖の原型はいまから20万~30万年前に二つの断層に挟まれた地域が陥没して形成されました。さらに8万年ほど前に古磐梯と呼ばれる山の噴火によって流路が塞がれ湖は大きくなりました。その後も火山活動による泥流の堆積や浸食が繰り返されて約2万年前に現在の猪苗代湖が形成されました。
磐梯山の噴火活動は806年(大同元年)と1888年(明治21年)の2回記録されています。1888年の噴火は大規模なもので、峰の一つであった標高1,800mの小磐梯山が吹き飛ばされました。このときは溶岩を流出させる噴火とは違い、マグマに含まれている水分が熱せられて起きる水蒸気爆発でした。その結果、大きく吹き飛ばされた山体の北側に馬蹄形のカルデラが形成されました。磐梯山の北側は磐梯高原と呼ばれる標高800m前後の美しい高原で大小合わせて約300の湖沼群が点在しています。磐梯山の噴火は多くの犠牲者を出しましたが、その反面美しい自然の景観をつくり、冬は良質の雪を求めてスキーヤーが訪れています。これらの湖沼群は1888年の噴火のときに発生した土石流でせき止められた川によってつくられたものです。桧原(ひばら)湖、小野川湖、秋元湖は磐梯三湖といわれ、これらの湖に挟まれて点在する大小40余りの湖沼群を総称して五色沼と呼んでいます。
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1888年の噴火のとき、村々を襲った土石流は多くの人命を奪いました。長さ9m、幅6m、高さ3mもある「見祢(みね)の大石」はその土石流で5kmも先から運ばれてきました。 |
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