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雨上がりの森に入り、地面を丹念に見回していると、いろいろなキノコが生えていることが分かります。湿った枯れ葉や腐りかけている木の蔭などに隠れているものもあります。ところが2~3日経って同じ場所へ出かけても、姿がすっかり見えなくなっていることがあります。突然姿を現わして、あっという間に消えてしまうキノコ。妖精のようなそんな生態も、キノコのもつ不思議な一面かもしれません。 |
植物でも動物でもない生物 |
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植物と動物との大きな違いは何でしょう。まずは自力で移動できるかどうかということです。この違いによって、すべての生物は動物と植物に分けられると思われています。しかし植物と動物とでは、たんに見かけ上の違いではなく、もっと大きな違いがあるのです。
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植物が生育するためには、空気や水、土の中からさまざまな栄養分を吸収すると同時に葉緑素の働きで光合成を行い、成長に必要なエネルギーを作り出しています。一方、動物は植物や他の動物をエサとすることによって、成長や日々の活動に必要なエネルギーを作り出しています。つまり、植物は無機物を有機物に変える生産者で、動物はその有機物を食べて無機物に変える消費者といえます。ここに植物と動物との大きな違いがあるのです。
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ところが、植物にも動物にも分けられない生物がいるのです。その生物は動物のように有機物をエネルギー源として生活しているのですが、自力で動き回ることができません。動物ならば持っていない細胞壁があり、また植物なら持っている葉緑素もありません。動物、植物のどちらに分類することもできない生物、それが「菌類」と呼ばれる生物です。そして、キノコも菌類に属しているのです。菌類というと広い意味ではバクテリア(細菌)なども含まれますが、一般にはカビやキノコなどを指しています。
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キノコとカビの違い |
キノコは胞子を作るために子実体という器官を形成します。キノコとは、この子実体が目に見えるほど大きく成長したものなのです。森の中へ入ったとき、腐りかけた落ち葉をひっくり返すと、裏に白いカビのような細い糸状のものが付いていることがあります。大抵はそれがキノコの本体である菌糸と呼ばれる部分で、直径は5~10ミクロン(1ミクロンは1000分の1mm)くらいです。
カビも胞子を作る器官を形成しますが、キノコのように大きく成長することはありません。つまり、キノコとカビの違いは何かといえば、胞子を作る器官が人の目に見えるほどに成長し、しかもいわゆる「キノコ」の形をしたものがキノコと呼ばれ、そうでないものがカビと呼ばれているのです。そのため、学術的に菌類という分類はあってもキノコという分類はないのです。 |
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菌糸
キノコは菌類の仲間で、キノコと呼ばれている部分は胞子を作る子実体のことです。キノコの本体は細いカビのような菌糸といわれる部分で、枯葉の下や腐った木の内部などでみられます。 |
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名前のあるキノコは日本だけで約3,000種 |
キノコ狩りに出かけるとき、一番注意しなければならないことは、誤って毒キノコを採取しないようにすることです。ただし、毒キノコといっても口に入れない限り、手を触れた程度で中毒になることはまずありません。そのため、キノコは食べられるキノコと毒キノコの2種類に分類されているように思われがちです。
しかし、キノコには実に多くの種類があります。キノコはカビと同じ菌界の生物です。菌として名前の付けられているものが約56,000種、このうち、日本にあるキノコで名前がついているのは約3,000種です。キノコが発生する時期、発生する環境などは必ずしも同じではありません。発生の時期は一般には秋とされていますが、温度や湿度といった条件が整えばいつでも発生します。その条件としては、雨上がりの後で少し気温が高いときです。つまり、秋以外に、梅雨もキノコにとっては発生しやすい時期なのです。これは梅雨どきにカビが発生しやすいのと同じことです。子実体の寿命は一般的には2~3日ですが、ときにはサルノコシカケのように、数年から数十年もかけて成長するものもあります。 |
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ショウゲンジ 針葉樹や広葉樹の林にはえるキノコで、柄に綿くず状のつばがあります。吸い物などに使われます。(写真提供:加藤貞亨氏) |
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