森に多くの生命が息づいているということは、エサが豊富にあり森が豊かな証拠です。つまり、見事な食物連鎖が形作られ、そこでは生命が常に循環しているのです。そして、キノコが森の豊かさを作るのに大きな役割を果たしているのです。森の中をよく見回すと、サルノコシカケが付いている老木を見つけることがあります。それらの木はあたかも森の長老といった風格を備えています。
ところが、サルノコシカケは木を腐らせるキノコです。このキノコが付いた木は、やがて空洞となって強度が弱くなるため、大風が吹いたときなどに折れたり倒れたりするのです。そうして、その木は寿命を終えるのです。しかし、サルノコシカケも森にとっては大切なキノコです。硬い木を腐らせるものを木材腐朽菌と呼んでいます。何百年、何千年も生きてきた木を、生命の営みが終ってから腐らせようとすると、何百年もかかってしまいます。それでは、森の中の命がスムースに世代交代できません。そこで、木が生きているうちから、木に取りつくのです。ただし、サルノコシカケが付くのは生きた木とはいっても、その木の生命活動とは直接関係のない芯材と呼ばれる中央の部分です。木が生命活動を行っているのは主に樹皮の部分で、材木となる中央の部分は自らの体を支えているだけのことが多いのです。 |
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木は風などで倒れただけでは腐りません。キノコなどの菌類の働きによって、分解され、土に戻ります。 |
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