水の話
 
水の話-意外と知らないキノコの話

昔から薬や食料として利用
菌神社
滋賀県栗東町の菌(くさびら)神社。舒命天皇9年(637)に建立されたといわれる古い神社で「くさびら」とはキノコのことです。 
 キノコが身近なところにたくさん生えるということは、人は古くから食料や薬用に利用していたはずです。「日本書紀」に「栗菌」(種類は不明)というキノコが応神天皇に献上されたと記述されています。また、一夜にして田にキノコが生えたため、景行天皇がその田の持ち主に「菌田連」という姓を与え、現在でもその地には「菌神社」が建っているところが滋賀県にあります。くさびらとは「傘平」が訛った言葉でキノコのことだとされています。いまでも奈良県の一部ではキノコのことをクサビラと呼んでいます。

古くからキノコを食用に利用していたといっても、野生のものを季節に採取するだけでした。やがて江戸時代になるとシイタケの栽培が試みられるようになりました。栽培といっても、最初は空中に浮遊しているキノコの胞子が枯木に付着し、自然に生えてくるのを待つという方法でした。現在のように原木に種菌を植え付けるようになったのは、明治に入ってからのことです。今ではナメコ、エノキタケ、マイタケなどが人工的に栽培されています。
マンネンタケとアガリクス
マンネンタケ(左)とアガリクス(右)。 マンネンタケは中国では霊芝(れいし)と呼ばれ、めでたいキノコとされています。アガリクスとはもともとハラタケ科のキノコを指す言葉です。
 また、昔から縁起のいいキノコとして、あるいは漢方薬などにも使われているものに、霊芝があります。霊芝というのは中国名で、日本ではマンネンタケ(万年茸)と呼ばれるサルノコシカケの一種です。名前からは深山幽谷に分け入らなければ採取できないキノコ、といったイメージを受けます。中国では紀元前から不老長寿や仙人になれる薬として珍重されてきました。現代でも、霊芝は癌をはじめ、さまざまな病気に効くと言われています。最近はアガリクスという南米産のキノコがさまざまな病気の予防や治療に効くといわれています。とにかくキノコは姿、形や発生の仕方などが植物とは違う不思議な面があるため、古来からたんに食用としてだけでなく、薬としても使われてきたようです。


毒キノコを食べる人たち
 ところで、薬になるものがある、ということは毒になるものもあるということです。ベニテングタケは色や形から、童話の世界にもよく描かれていますが、一方では毒キノコとしても知られています。

ところが、ヨーロッパではベニテングタケが宗教儀式などに使われたり、バイキングは戦いの前に勇気を奮い立たせるために食べていたといわれます。これは、ベニテングタケに含まれているある種の成分が中枢神経に作用し、興奮、精神錯乱、幻覚を引き起こさせるからです。また、ウォッカの中に浸け、飲みやすくしている地方もあるそうです。

テングタケの仲間には猛毒のものがいろいろとあります。とくに毒性の強いものにドクツルタケ、シロタマゴテングタケ、タマゴテングタケがあります。これらのキノコにはアルカロイドの猛毒素アマトキシンが含まれており、食べてから8~24時間後に激しい腹痛と下痢に見舞われます。その後、いったんは回復に向かうように見えますが、2~3日すると肝臓の障害が現われ、意識不明、昏睡状態となりやがて死へと至ります。なお、これらのキノコを見分けるには、根元に袋状の「つぼ」がついてるかどうかも一つの目安となります。つぼ状の袋が付いているものには毒キノコが多いのです。

キノコについての知識がないと、キノコの毒が心配です。ところが、普通は毒キノコとして本などで紹介されているものでも、地域によっては食用とされているものがあります。もちろん、茹でてから水でさらしたり、塩漬けにするなど、毒を抜く方法が取られているようです。ところが、同じキノコでも地域によって、毒性に強弱があるようなので、ある地域の料理方法をそのまま真似たとしても、中毒を起こすことがあるそうです。やはり、知らないキノコはむやみに食べない方がいいようです。また、毒キノコではありませんが、お酒を飲む前後数時間にホテイシメジを食べると、二日酔いの症状が現われる人がいます。ひどい場合には、呼吸困難、意識不明の重体になることもあるようです。

毒キノコは何種類くらいあるのでしょうか。現在、知られているのは約150種です。これはキノコ全体から見れば決して多い数ではありません。しかし、この数字は年々増えています。というのも、それまでは毒キノコとは思われていなかったものが、調理方法やアルコールと一緒に食べることによって、中毒症状を表わす場合のあることが分かってきたからです。昔からよくいわれている毒キノコの見分け方というのは、すべて間違いだといっても過言ではありません。ただ、誤食して中毒を起こすキノコの6~7割はカキシメジ、ツキヨタケ、クサウラベニタケだといわれています。ということは、これらのキノコをしっかりと覚えておけば、キノコ中毒の数は半数以下になるはずです。
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日本で名前のつけられているキノコはおよそ3,000種。このうち毒キノコとして分かっているものが約150種。食べられるキノコはかなり多いのですが、毒キノコとの見分けのつきにくいものもあるので、注意が必要です。
●シャカシメジ
●ツバアブラシメジ
●サクラシメジ
●ナカグロモリノカサ
●アイタケ
●コウタケ
●チチタケ
●マツタケ
●クロカワ
●タマゴタケ
●スジオチバタケ
●ウラベニホテイシメジ
●クリフウセンタケ
●カバイロツルタケ
●ハイカグラテングタケ
●ヌメリササタケ
●コフキサルノコシカケ
●クヌギタケ
●アカヤマドリ
●キホウキタケ
昔から毒キノコを見分ける方法として、いろいろなことがいわれていますが、どれも正確ではありません。 キノコ中毒を防ぐには、毒キノコを一つ一つ正確に覚えることが一番確実な方法です。
●ベニテングタケ(毒)
●コテングタケ(毒)
●クサウラベニタケ(毒)
●ドクツルタケ(毒)
●コテングタケモドキ(毒)

ニオイコベニタケ ムラサキアブラシメジモドキ サビホコリ
ニオイコベニタケ
臭いを嗅ぐとカブトムシのような臭いがするため、 こんな名が付けられました。
ムラサキアブラシメジモドキ
美しい紫色をしていますが、毒キノコではありません。どんな料理にもあうといわれていますが、生で食べると中毒を起すこともあります。
サビホコリ
変形菌の一種で、かつてはキノコの仲間に分類されていました。現在では変形菌は菌類(キノコ)とは別のものとされています。この変形菌はアメーバのように、自ら移動します。


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