ところで、薬になるものがある、ということは毒になるものもあるということです。ベニテングタケは色や形から、童話の世界にもよく描かれていますが、一方では毒キノコとしても知られています。
ところが、ヨーロッパではベニテングタケが宗教儀式などに使われたり、バイキングは戦いの前に勇気を奮い立たせるために食べていたといわれます。これは、ベニテングタケに含まれているある種の成分が中枢神経に作用し、興奮、精神錯乱、幻覚を引き起こさせるからです。また、ウォッカの中に浸け、飲みやすくしている地方もあるそうです。
テングタケの仲間には猛毒のものがいろいろとあります。とくに毒性の強いものにドクツルタケ、シロタマゴテングタケ、タマゴテングタケがあります。これらのキノコにはアルカロイドの猛毒素アマトキシンが含まれており、食べてから8~24時間後に激しい腹痛と下痢に見舞われます。その後、いったんは回復に向かうように見えますが、2~3日すると肝臓の障害が現われ、意識不明、昏睡状態となりやがて死へと至ります。なお、これらのキノコを見分けるには、根元に袋状の「つぼ」がついてるかどうかも一つの目安となります。つぼ状の袋が付いているものには毒キノコが多いのです。
キノコについての知識がないと、キノコの毒が心配です。ところが、普通は毒キノコとして本などで紹介されているものでも、地域によっては食用とされているものがあります。もちろん、茹でてから水でさらしたり、塩漬けにするなど、毒を抜く方法が取られているようです。ところが、同じキノコでも地域によって、毒性に強弱があるようなので、ある地域の料理方法をそのまま真似たとしても、中毒を起こすことがあるそうです。やはり、知らないキノコはむやみに食べない方がいいようです。また、毒キノコではありませんが、お酒を飲む前後数時間にホテイシメジを食べると、二日酔いの症状が現われる人がいます。ひどい場合には、呼吸困難、意識不明の重体になることもあるようです。
毒キノコは何種類くらいあるのでしょうか。現在、知られているのは約150種です。これはキノコ全体から見れば決して多い数ではありません。しかし、この数字は年々増えています。というのも、それまでは毒キノコとは思われていなかったものが、調理方法やアルコールと一緒に食べることによって、中毒症状を表わす場合のあることが分かってきたからです。昔からよくいわれている毒キノコの見分け方というのは、すべて間違いだといっても過言ではありません。ただ、誤食して中毒を起こすキノコの6~7割はカキシメジ、ツキヨタケ、クサウラベニタケだといわれています。ということは、これらのキノコをしっかりと覚えておけば、キノコ中毒の数は半数以下になるはずです。 |
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