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窒素・リンを吸収 |
海苔の品質は色、香り、艶、味などで決まり、そのための条件はいろいろあります。一つは海水温です。カキ殻から海苔の胞子が放出されるときの海水温は約20℃です。この海水温は地域によって若干の変動はあるようですが、1.5℃違うだけでタネ付けがうまくいかないといわれています。海苔の葉状体が成長するのは冬場です。そして寒海苔という言葉があるように、寒い冬に育った海苔は上質だといわれてきました。海苔の生長に適した海水温は15~20℃です。海水温が低すぎても海苔の生長には良くないようですが、おいしい海苔をつくるには海水温が15℃以下の方がいいとされています。逆に海水温が高すぎても海苔はうまく育ちません。最近は海水温が高くなっているため、以前に比べて海苔が育ちにくくなっていると語る海苔養殖業者もいます。
海苔の品質には、海水に含まれる栄養も大きく影響します。植物の生育にとって必要な栄養は窒素やリンです。これらは有機物が分解されることによっても生成されますが、家庭排水の中にも含まれています。ある程度の量であれば植物の生育に役立ちますが、量が多くなりすぎると水中の植物プランクトンなどが異常繁茂して、水を汚す原因となってしまいます。
河川が流れ込む内湾で遠浅の海にはたくさんの窒素やリンなどの栄養が川によって運ばれてきますが、健全な生態系が形成されていればそこにすむ生き物たちで形づくられている食物連鎖によって海が汚れることはありません。栄養の豊かな遠浅の河口域は当然海苔を育てるのにも適した場所です。しかし栄養が豊かな海は有機物で汚れた海のことではありません。海苔は陸上の植物のように根から栄養分を吸い上げるのではなく、葉状体全体で養分を吸収します。有機物が多いと海苔の葉状体の表面に汚れが付着するため養分を吸収できなくなり死ぬことがあります。 |
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海の生物を育てるには窒素やリンも必要ですが、家庭排水などによって大量の窒素やリンが流入すると海を汚す大きな原因にもなります。 |
海の浄化にも役立つ海苔養殖
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海苔も窒素やリンを吸収するため、海の水質浄化にも役立っています。しかも海苔は収穫することを目的に養殖されているので、養殖されている水域から吸収された窒素やリンは当然水域から外へ運び出されます。
乾海苔1枚の重さは約3gです。この中に窒素が約6%、リンが約0.6%含まれています。日本の海苔生産量は年間約100億枚です。つまり、海苔は年間で1,800tの窒素と180tのリンを日本の海から回収していることになります。
窒素を処理するためにかかる費用を1t当たり約2,500万円、リンは1t当たり約1億5,300万円とすると、海苔養殖によって日本全体で窒素の処理費用450億円、リンの処理費用275億円が削減されていることになります。海苔養殖は日本の食文化だけではなく、海の浄化にも役立っているのです。 |
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