山村の活性化と排水処理

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財政を水処理から見直す村

全国トップレベルの健全財政

 合併浄化槽の整備に村が負担する費用は約2億5,000万円で済むのに対し、同じサービスを下水道でおこなうためには45億円かかります。村の予算規模は約28億円です。下條村が下水道の整備をおこなっていたならば毎年、維持費も含めると1億7,000万円の費用が必要になっていたとされます。村では浄化槽整備によって法律で定められた浄化槽の水質検査、保守点検、汚泥引き抜きなどの費用を補助しているにもかかわらず、下水道に比べ年間で1億5,000万円の負担軽減となりました。
 自治体の財政の健全さを表す指標の一つに実質公債比率というものがあります。自治体の収入に対し負債を返済する割合を示したもので、18%以上になると国や都道府県の許可がないと地方債(借入)の発行ができなくなり、25%を超えると借入が制限されてしまいます。下條村は平成21年(2009年)度からこの数字がマイナスになり、東京23区を含む全国1742市区町村中4番目という高い健全性を誇っています。なお、下條村の起債残高(借金)は約11億4,000万円ですが、交付税措置分を引いた実質起債残高は約8,800万円です。しかも一般会計基金が約55億7,000万円あるため、村としての基金は年間予算の倍の約55億円にのぼります。

人口約4,100人の下條村は、下水道ではなく合併浄化槽を選択した結果、年間で1億5,000万円の負担軽減となりました。

浄化槽だけで汚水処理人口普及率が90%以上

 長野県の汚水処理施設で一番多いのは下水道で80.2%、次いで農業集落排水の10.0%、浄化槽・コミュニティープラントが5.7%となっています。ところが県内77市町村のうち、下水道のない町村が13あります。これらの町村は農業集落排水か浄化槽・コミュニティープラントで汚水処理をおこなっています。このうち浄化槽・コミュニティープラントだけで汚水処理をおこなっているのは南相木村、北相木村、泰阜村、大鹿村、下條村の5村です。さらに浄化槽・コミュニティープラントだけで汚水処理人口普及率が90%以上となっているのが下條村と南相木村、北相木村です。
 南相木村と北相木村は長野県南佐久郡の東南端、群馬県境に位置し、人口はともに1,000人前後で総面積の約9割を山林が占めています。この地域は、かつて林業や米麦の栽培、養蚕等が主な産業でしたが、昭和30年頃から化学繊維の登場で養蚕業は衰退していきました。
 北相木村の標高差は約400mです。村内の全域を浄化槽の整備対象地区としたのは、こうした地形のため、下水道の整備が困難で、工事費もかなりかかってしまうからです。

交流と同時に自立を考える

 蛇口をひねれば、いつでも好きなだけ、きれいな水を使うことができます。その水の元を辿れば山林へと行き着きます。例え地下水であったとしても、水脈を辿ればやはり山林へと行き着くはずです。下流域の人々の暮らしは、上流域の恩恵があって成り立っているのです。
 上流域と下流域の人々との交流は大切です。お互いが助け合うことも重要です。しかし、もっとも大切なことは、中山間地域が自立できる仕組みづくりです。水処理の仕方一つをとっても、中山間地が自立し、活性化できる方法があるようです。

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