生き物が教えてくれる水の中の変化

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きれいな水辺を復活させる

雑木林の間から高層ビルが顔をのぞかせています。水田の向こうには住宅団地と里山が仲良く並んでいます。手賀沼、印旛沼の周辺地域に多くの人が憧れ、次々と住宅が建てられています。人が集まることで、水環境にどのような影響があるのでしょうか。

流域の都市化とともに消えていったメダカ

 江戸時代に江戸の町を守るためにおこなわれた利根川の改修工事によって、皮肉にも手賀沼や印旛沼の周辺にあった村々は度々水害に見舞われるようになりました。さらに、急速に人口が増える江戸へ食糧を供給するため、新田開発もおこなわれました。明治時代になってからも干拓による新田開発は続けられ、手賀沼や印旛沼の面積は小さくなっていきました。それでも水が汚れたり、魚や水草がなくなるということはありませんでした。
 昭和30年(1955年)頃までは手賀沼も印旛沼も透き通った水を湛え、豊富な魚介類や水草が漁業や農業を支えていました。もちろん生活用水としても重要な役割を担っていました。そして今でも、印旛沼は飲料水、農業用水、工業用水の水源として、手賀沼は農業用水として地域の人々の生活を支えています。
 ところが昭和30年(1955年)頃から流域の都市化がはじまります。手賀沼と周辺の川からメダカの姿が見られなくなったとされるのは昭和40年(1965年)です。この年にアオコも発生しています。一方、印旛沼放水路(新川)でアオコが発生したとされるのは昭和42年(1967年)で、手賀沼とほぼ同時期です。流域の都市化により、生活雑排水が流入し、それがアオコの発生という目に見える形になって現れてきたのです。その後、事態は深刻になっていきました。

印旛沼の近くでは水田と雑木林と住宅地が仲良く並んでいる風景が見られます。

以前よりもかなり減ったとはいえ、夏場などではアオコが発生することがあります。

水の汚れでおこなわれなくなった漁法

 手賀沼の平均水深は86cmです。水がきれいであった頃、漁師さんは昼の弁当の時、沼の水をそのまま飲用にしていました。子どもたちも、水遊びを楽しんでいました。ただ、泳ぐ時に足に絡み付くほどたくさんの水草が茂っていたといいます。また湖底からは湧水もあり、水温が非常に冷たい場所もあったようです。昭和27年(1952年)には遊泳場がつくられたところもありましたが、昭和30年(1955年)に水の汚れを理由に遊泳が禁止となりました。丁度その頃から、柏市、我孫子市、佐倉市など手賀沼や印旛沼へ流入する河川の流域で団地の開発が始まっています。ただし水が汚れたとされる場所は一部だけでした。
 さらに流域の開発が進み、手賀沼では昭和40年(1965年)に続き、昭和45年(1970年)にもアオコが発生し、翌年にはアユやウナギの姿がほとんど見られなくなりました。それまで放流をしていたワカサギは孵化しなくなり、昭和48年(1973年)にはアオコが異常発生しました。その後もアオコはしばしば大量に発生するようになりました。
 手賀沼や印旛沼には古くからさまざまな漁法がありました。その一つに「おだあげ漁」がありました。水中へ雑木を投入しておくと、水温が低下する冬にコイやフナが水中の雑木の間へ集まって冬眠状態になります。そこで竹で作った簾を雑木の周りに立てるようにして囲み水中の雑木を取り除きます。つまり狭い範囲に魚を集めておき、網などを使って獲るという漁法です。水の汚れのため、この漁は昭和48年(1973年)を最後におこなわれなくなりました。昭和49年(1974年)にはそれまで27種類あった手賀沼の水草がガマ、ヨシ、マコモの3種類だけになったという新聞報道もありました。

印旛沼ではクチボソを獲るための網があちらこちらで見られます。

進む湖沼の汚れ

 印旛沼でも繁茂していた豊富な種類の水草が昭和50年代になると、どんどんと姿を消していきました。昭和59年(1984年)には西印旛沼で、昭和60年(1985年)には北印旛沼でオニビシが水面を覆い尽くし、船の航行に支障をきたすほど繁茂しました。オニビシのような浮葉植物に水面を覆われてしまうと、水中に日の光が届かなくなり、沈水植物が育たなくなってしまいます。さらに枯れたオニビシが底に沈み分解されることによって、水中の窒素やリンを増加させてしまいます。この他、水中へ日が差し込まなくなることで水温の低下といったことも見られます。
 そこで繁茂したオニビシは刈取り船で除去がおこなわれることになりましたが、消滅した沈水植物は復活することなく、悪化した水質もすぐには改善されることはありませんでした

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