かつて瀬戸内海は宝の海であったといいます。1970年代の瀬戸内海での漁業生産量を単位面積で比較すると、イギリスとスカンジナビア半島に挟まれた北海に比べ3.6倍、バルト海の9.3倍、地中海と比べると実に25倍もありました。世界的に見ても漁業資源の豊かな海であったのです。最近は当時に比べ漁業生産量は半減しているとはいえ、まだまだ世界的にも高い生産量を誇っています。
またカキやノリといった養殖漁業も盛んで全国の養殖漁業のうち、4分の1近くの生産量を誇っています。しかも養殖漁業は瀬戸内海の海面漁業生産量の約1.5倍にも達しています。
養殖漁業はいわば海の畑のようなものです。陸の畑であれば肥料を施して生産量を高めます。海の場合は魚介類などを育てる栄養分はもっぱら川を通って流入します。その栄養分の供給源は森林です。さらに川は土砂も海へ運びます。その土砂が干潟や美しい砂浜などを形成するために役立っています。
ところが日本が高度経済成長をしていく過程で、水資源の確保や治山などのため多くのダムや河口堰がつくられました。それらのおかげで多くの人が恩恵を受けてきたのは事実です。その一方で魚介類を育てる栄養分や土砂の海への供給が減少したのも事実です。
|