丸木舟の横断面は「U」の字の形をしています。川で使われている舟も同じ形です。それに対し、海で使われる舟の横断面は「V」の形、つまり尖った底の形をしています。川舟と海舟との一番大きな違いは、実はこの舟底の形にあるのです。
川には流れがありますが、波はほとんどありません。逆に、海には波がありますが、川のような流れはありません。海の上を進むには、波を切って進む必要がでてきます。海舟の船首部分の形は波を押し分けて進むことができるように鋭角となり、そのまま水中にまで続いています。舟底を「V」の形にすると、喫水線が深くなり、舟は安定します。しかし、水深の浅い場所では舟底がつかえてしまい、かえって使いづらくなってしまいます。川はいたるところに浅瀬があるため、舟底をなるべく平らにした方がいいのです。
船首部分が鋭角になっているように見える川舟もありますが、よく見ると鋭角となっているのは水面から上の部分だけの場合がほとんどです。岐阜市内近辺を流れる長良川で使われる漁舟は、舟の前方が反り上がった形となっているため、船首から3分の1くらいのところまでの舟底が水面の上に出ています。しかも船首部分は平らになっています。舟底で水面を滑らせるようにして進むのです。川や湖など、主に海以外の場所で使われる舟は基本的に舟底が平らになっています。琵琶湖で使われている舟も、川に比べれば波があるため船首部分は鋭角になっていますが、舟底は丸みを帯びた平らな形になっています。 |
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川舟に限らず、日本の木造船をつくるための図面はありません。寸法は、すべて舟大工の頭の中に入っています。へ先部分が反り上がっているのも川舟の特徴の一つです。水を切って進むのではなく、舟底で水面を滑るようにして進むためです。しかし、こうした反りをつけることが、舟を作るときに一番難しい作業だと舟大工は語っています。反りが大きすぎると不安定となり、小さいと水の抵抗が大きくなってしまうからです。 |
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