水の話
 
閉鎖性水域の中で起きている変化

閉鎖性水域では窒素、リンの除去が大切
赤く染まる空 ところが、池や湖、湾などの水の汚れはなかなか改善されません。川や外洋のように流れのある場所とは異なり、池や湖、湾のように流れのない水域を閉鎖性水域と呼んでいます。閉鎖性水域であってもきれいな水が流れ込むのであれば、水はきれいになるはずです。
排水の中からBODを取り除けば、その時は水はきれいになります。しかし、その水が閉鎖性水域に流入すると再びBODが増加していきます。なぜBODが増加していくのかというと、それは排水に含まれている窒素とリンのためです。
窒素、リンはカリウムとともに植物の生育に必要な3大栄養素として知られています。これらの成分は植物の根、葉、実などの成長に必要です。水中にはごく微量ながら、きわめて微小な藻類が含まれています。藻類の生育には3大栄養素に水と太陽光が必要です。カリウムは土の中に含まれていて、わずかな量さえあれば植物の生育には十分です。つまり、閉鎖性の水域に窒素、リンが流入するだけで藻類は光合成を行い、盛んに繁殖してしまうのです。
藻類はいわば有機物の固まりのようなものです。いくらBODを除去しても、窒素とリンを除去しない限り水は藻類の過剰繁殖により汚れてしまいます。川のように流れのある場所ならば、窒素やリンがある程度水に含まれていても、藻類が光合成によって繁殖する前に流されたり拡散されたりします。そこで、水の流れのない閉鎖性水域では窒素とリンも除去しなければならないのです。


アオコ 水が緑色をしているのは、水中で発生したアオコのためです。閉鎖性の水域での水質がなかなか改善されないのは、主に家庭排水から窒素・リンが常に供給されるためです。

窒素とリンさえあれば増え続けるBOD
湾 繁殖した藻類はたんに水を汚すというだけではありません。東京湾、伊勢湾、大阪湾などで慢性的に発生する赤潮の原因は、藻類やプランクトンの異常繁殖によるものです。中には毒性をもつものもあり、養殖魚に大きな被害を与えています。湖沼でも有害なアオコを発生させています。特にアオコの中のミクロキスティスにはフグよりも強力な毒を持っています。海外での事例ですが、沼の水を飲んだ牛が死亡し、その原因は沼に発生したアオコであったということもあります。
 生活排水などに含まれる窒素が地下に浸透して地下水汚染を引き起こす場合もあります。窒素は酸素や水素と結びついて硝酸やアンモニアといった形でも存在します。そして硝酸イオンを含んだ地下水を飲むと、血液の中で酸素を運ぶ役目をしているヘモグロビンと硝酸が結びついてしまい、酸素と結びつけないメトヘモグロビンに変わってしまいます。その結果血液も青くなってしまいます。つまり酸欠状態になってしまうのです。とくに乳幼児に症状が出やすいためブルーベビー病という名称も使われています。
BODだけを取り除いた水と、窒素とリンも取り除いた水を並べ、日光が当たる場所に一定期間放置しておきます。するとBODだけを取り除いた水は緑色になってきます。藻が繁殖している証拠です。金魚鉢の水を新しく替えても、しばらく経つと緑色になってしまうことはよくあります。これも金魚の糞に窒素やリンが含まれているため、藻が繁殖するからです。
金魚
水槽の中で金魚を飼う場合に、屋内と屋外、水草を入れた場合と入れない場合では水の汚れ方が違ってきます。水草を入れずに屋外に置いた時が一番早く水が汚れます。

発生負荷量の推移と削減目標量
※平成16年度の値は削減目標量とした。
出典:環境省「化学的酸素要求量、窒素含有量及びりん含有量に係る
総量削減基本方針に関する参考資料(平成13年12月)
COD発生負荷量(トン/日)
窒素発生負荷量(トン/日)
リン発生負荷量(トン/日)


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