水の話
 
窒素・リンの除去に取り組む町

琵琶湖に注ぐ水をきれいにする余呉町
 眼下に広大な湖面が見渡せます。ここは豊臣秀吉と柴田勝家が熾烈な戦いを繰り広げた賤ヶ岳です。山頂からは南西に琵琶湖が、北に余呉湖が樹間から臨めます。
余呉湖の水面は琵琶湖の水面よりも50メートル近く高くなっています。しかし、この湖からの流出河川は見られません。湖の北に1本の川が見えますが、余呉川から余呉湖へ水を引くために作られた水路です。現在は余呉湖の東側に、農業用水を流すための地下水路が作られていますが、もともとは湧水を主な水源として、流出河川をもたない湖で、かつては鏡湖とも呼ばれ、天女の羽衣伝説が伝わる美しい湖でした。
滋賀県伊香郡余呉町は琵琶湖の北に位置し、町を流れる川はいずれも琵琶湖に注ぎ込みます。琵琶湖は近畿の水瓶といわれるように、京都や大阪の人々にとっての大切な水源となっています。余呉町は水源地域の町なのです。
余呉町は都市計画区域外で、公共下水道での整備はできませんが、水源地域の町の責任として河川をきれいにするため、昭和59年度から生活排水対策として農業集落排水事業で汚水の集合処理による処理施設の建設を町の全集落を対象に進めています。
しかし、町の東を南北に流れている高時川の支流に沿った戸数13戸の集落では、集落の真ん中に川が流れており、処理施設を作るにも戸数が少なく、川を越すにはポンプ場を設置しなければなりません。また、近隣の処理施設からも遠くはなれています。そこでこの集落では、工期も短く設置費用などが少なくて済む余呉町独自の「個別排水処理施設整備事業」をおこなうこととなり、そうした中で窒素・リンを除去する浄化槽を導入することになりました。
高時川
余呉町を流れる高時川は、やがて琵琶湖に流れ着きます。その琵琶湖の水は京都や大阪の水源になっています。

余呉湖
賤ヶ岳の頂上からは、余呉湖が一望の下に臨めます。美しい風景を守るには、水をきれいにすることが条件になってきます。
賤ヶ岳の頂上か

窒素・リンの除去で下流の水を守る
 八幡町と余呉町。いずれの町も水源地域に位置する町です。民間レベルから行政レベルまで、古里の美しい川や湖を守ろうという運動が盛んになっています。しかし、一つの地域だけで水をきれいにする努力を続けても、汚れの元が次々に流れ込むならば、いつまでたっても美しい水を取り戻すことはできません。
川は上流から海に至るまで、1本の流れでつながっています。流域すべての地域で川を美しくする努力が必要なのです。八幡町や余呉町のように、河川を汚す大きな原因となる窒素・リンを生活排水から取り除こうと努力する市町村が増えていけば、湖沼や内湾などもきれいになっていくことでしょう。

川を挟んで13戸の家 窒素・リンを除去する浄化槽の必要性を説明
余呉町で個別排水処理施設整備事業が行われた地区は、川を挟んで13戸の家が集まった集落です。集合処理施設を設置するには下流の地区まで長い管路を敷設しなければならず、多大な費用がかかってしまいます。余呉町の職員は1軒1軒の家をまわり、窒素・リンを除去する浄化槽の必要性を説明しました。


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