コケ植物は水気の多い場所にしか生育できないと思われています。しかし、ミズゴケのように常に水のある場所でしか生きられないコケ植物もあれば、雨以外にはほとんど水が供給されないような場所に生えるコケ植物もあります。このようなコケ植物には水を体の中に蓄える特殊な構造があるのでしょうか。
一般に、乾燥地帯に生える植物は葉に水分を貯えられるように、何十にも細胞が層をつくり、葉はかなりの厚みを持っています。普通の植物も葉の細胞は何層にも重なり、表面は水分の蒸発を防ぐロウ状のクチクラという物質で覆われているものもあります。ところが、歩道の敷石の間に見られるコケの葉を1枚だけ取り出し拡大してみると、細胞が1層しかないことが分かります。そのため、晴天の日が数日も続くと、コケ植物は水分を失ってしまいますが、完全に枯れてしまったわけではありません。かさかさに乾いたようなコケ植物に水をかけると、またたく間に元の姿に戻ります。
コケ植物の中には体の中に水分を蓄える機能を持った種類もありますが、多くは群生することにより、1本1本の植物体が空気に触れる面積を少なくし、全体として湿度を保つようにしています。さらに、体から水分が失われると、光合成も呼吸も停止して眠りの状態になり、水分が与えられると再び活動を開始します。葉の先が丸まっているカモジゴケのように、葉の間に少しでも長時間水分を保持させるものや、スギゴケのように乾燥すると萎むことによって水分の蒸散を防ぐものなどがあります。
コケ植物の細胞は非常に薄く水分が失われやすいため、逆に少ない水分が与えられるだけでもすぐに活動ができるようになっています。コケ植物は、水の利用が上手な植物です。 |
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つぼみのように見えるのは、花ではなく胞子をつくる器官・胞子体です。コケ植物の葉は水分がなくなると閉じてしまいますが、水をかけると、あっという間に開きます。 |
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