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水質とともに変化する水生昆虫 |
池や田んぼにすむ昆虫が数を減らしているのに対し、川の水生昆虫はここ30年ほど前に比べて増加しているようです。川の汚れが一番ひどかったのは、1970年代でした。1970年には水質汚濁防止法が制定されたおかげで、極端に汚れた川は徐々に減っていきました。水質が改善されるに従って、水生昆虫も数を増やしてきたのです。
ところが、かつては秘境と呼ばれていたような山奥まで開発が進められていき、同時に生活様式も変化して、大量の生活排水が川に流れ込むようになりました。手つかずの自然のままの清流が次第に減っていったのです。つまり、日本の川全体の水質は平均的にはよくなったといっても、極端に汚れた川と同時に、手つかずの自然のままといった清流も減っていったのです。
水生昆虫のトビケラのことを中部地方ではザザムシと呼んでいます。長野県の伊那谷を流れる天竜川流域では昔からザザムシを佃煮にして食べています。しかし、佃煮にする原料は70年代より前はトビケラよりもきれいな水にすむとされているカワゲラでした。つまり、天竜川の水質が変化したことによって、虫の種類も変化したのです。汚れていた川でトビケラが増えれば水質が改善された証拠になります。しかし、トビケラには石と石の間に網を張り、流れてきたエサを捕獲するものがいます。ところがこのような網を張ると、川底の石が固定され、藻が繁茂してしまいます。その結果、アユがエサとしているコケを食べられなくなるという場合もでてきます。これでは水質が良くなったからといって、アユにとってすみやすい環境とはいえません。こうした特定の種類の水生昆虫が増えたのは水量との関係があるようです。水量が減ったことで川底の石が流されなくなり、藻が生えやすくなってしまった結果です。 |
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天竜川流域では昔からザザムシを佃煮にして食べています。見た目はグロテスクですが、味はカワエビに似ています。ザザムシとは通称で、ザーザーと水の流れるところで取れる虫という意味のようです。 |
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カゲロウの幼虫は腹部にエラをもっています。成虫になってからは短命で、数時間から数日間で寿命を終えます。主に水のきれいな川にすんでいます。 |
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トビケラの仲間には川底を歩き回ってエサを取るもの、巣を身にまといはい歩くもの、巣の前に網を張ってエサを取るものなどがいます。 |
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カワゲラは水のきれいな川にすむものがほとんどです。成虫は飛ぶ力が弱く、木の枝などで休みながら飛びます。 |
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