水の話
 
江戸前は今も生きている

人工干潟に戻ってきた絶滅危惧種
 江戸川と荒川の河口部に広大な埋め立て地があります。この一角に葛西臨海水族園があり、東京湾に向かって西なぎさ、東なぎさと呼ばれる人工の干潟がつくられています。この干潟がつくられて20年近く経ち、様々な干潟の生物が見られるようになってきました。波打ち際ではカニ類のほかに小さなアサリ、マテガイなどの貝殻が確認できます。
護岸改修などによって河口の泥干潟がなくなり、一時はほとんど姿が見られなくなり、東京都の絶滅危惧種に指定されているトビハゼも江戸川の河口部で見られるようになってきました。トビハゼは東京湾が生息域の北限です。九州の有明海にすむムツゴロウと同じように泥の上を這いずり回り、穴を掘って生活しますが、体長は5cmと小さく、肉食で小型のカニなどをエサにします。
貝
三番瀬ではアサリ、バカガイ、マテガイなどもたくさんいます。4月から6月にかけて潮干狩りも行なわれています。ほかにもシオフキガイ、アカニシ、マガキなどもいます。

 
干潟
トビハゼ
トビハゼは東京湾でごく普通に見ることのできる魚でしたが、干潟の減少などによって数カ所でしか確認されていません。そのトビハゼが葛西臨海水族園の近くに生息しています。


東京湾の再生で復活しつつある江戸前
 二枚貝が増えているのは人工干潟が機能している証拠です。汚水処理施設もかなり整備されてきました。それにも関わらず東京湾ではいまも赤潮や青潮が発生しています。子どもたちが砂浜や海に入って楽しめるような場所も非常に限られています。昔のような江戸前の魚も数が減ってきました。こうした中、東京湾を再生するため「快適に水遊びができ、多くの生物が生息する、親しみやすく美しい『海』を取り戻し、首都圏にふさわしい『東京湾』を創出する」ことを目的としたプロジェクトが取り組まれています。
東京湾に流入する河川には首都圏の生活排水、産業廃水を中心とした汚れが大量に含まれています。海底のCODがもともと高く、そこへ窒素、リンが大量に流入し、東京湾奥部での濃度が高くなると、海底水が貧酸素化しやすくなります。その結果、赤潮が発生したり、千葉県側の湾奥部では青潮も発生しています。
東京湾の水質に負荷を与える一番大きな原因は生活排水です。つまり市民レベルでの取り組みなくして東京湾の再生は考えられなくなっているのです。これまでに地域住民との共同による海浜清掃活動、環境保全を目的とした総合学習など様々な試みが行われています。その中でも特に重要なことが海へ流れ込んだ有機物を分解する小生物がたくさんすむ干潟や藻場の保全、再生です。それにより海そのものが持つ浄化機能が回復、向上します。すでにこうした活動は始まっています。少しずつですが、トビハゼや二枚貝といった魚介類が増えはじめています。アサクサノリの復活も試みられています。
江戸前の復活は可能です。そのためには干潟や藻場の復活だけではなく、東京湾流域に暮らす2,600万人の人々の水を守る取り組みが必要です。

なぎさ
葛西臨海水族園の前には東なぎさ、西なぎさの二つの人工なぎさがつくられています。西なぎさではコメツキガニ、オサガニ、ヤマトオサガニ、マメコブシガニやエドハゼ、マハゼなどの稚魚が見られます。


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