水の話
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暮らしを支える水

万全ではなかった水質汚濁防止法

 水質汚濁防止法の目的は「工場及び事業場から公共水域に排出される水の排出及び地下への浸透の規制」とともに「生活排水対策の実施を推進」し、「公共用水域及び地下水の水質汚濁の防止」を図ることによって「国民の健康の保護や、生活環境を保全」することです。
水質汚濁防止法が規制対象とした項目は、人の健康に被害を生ずる恐れのある有害物質と水の汚れに係る生活環境項目でした。当時、河川や湖沼の汚れも問題にされていましたが、海の汚れの方が大きく取り上げられていました。海ではしばしば赤潮が発生し、漁業被害もでていました。大規模な工場地帯は海沿いに多く、工場排水には有害な化学物質が含まれていることもあったからです。水質汚濁防止法が施行されると工場や事業場は排水処理装置を設置するなどし、人の健康に被害を生ずる恐れのある有害物質が海へ流されることは少なくなっていきました。
しかし水質汚濁防止法は万全ではありませんでした。一つにはこの法律で規制を受ける対象となっていたのは、水の汚れに係る生活環境項目で1日50m3以上を排水する工場や事業場でした。50m3というと一般家庭約50戸分に当たる排水量です。そのため多くの小規模事業場の排水は規制の対象外になっていたのです。さらにこの法律によって規制されたのは工場や事業場などからの排水で、生活系や農業系の排水規制はほとんどなかったのです。そのため生活系の流入が多い湖沼の水質改善には十分な効果が見られませんでした。




湖沼水質特別措置法を制定

 水質汚濁防止法が規制項目としたのは有害物質の他に、水素イオン濃度(pH)、生物化学的酸素要求量(BOD)、浮遊物質量(SS)、大腸菌群数といった生活環境保全に関する環境基準です。BODやSSは目に見える汚れですが、窒素やリンはそのままでは目で確かめることはできません。しかも窒素やリンの規制はなかったのです。規制がないということは、そのまま垂れ流されるということです。
窒素やリンは植物の成長にとって必要な栄養です。しかし窒素やリンが増えすぎると富栄養化となり、アオコの増殖や赤潮と呼ばれる現象が発生します。その結果、水質が悪化し、水が濁り、さらには湖底の酸素がなくなって魚介類がすめなくなってしまいます。
窒素、リンが大量に流入する原因は主として浴室、台所、し尿などの生活系による排水でした。これらの排水からBODは除去されても、窒素やリンは除去されませんでした。
水質汚濁防止法によって海の水質は改善されたものの、水道水源に使われることの多い湖沼の水質は窒素やリンの流入によってむしろ悪化していきました。そこで昭和59年(1984年)湖沼水質特別措置法(湖沼法)がつくられました。この法律では特に重要でしかも富栄養化しやすい湖沼について、都道府県知事が国に申し出ることによって環境大臣が指定湖沼にすることができることになりました。指定湖沼とは法律に基づいて特別に保護しなければならない湖沼(水域)のことで、指定されると保全についての措置を講ずるための予算や行政面で特別に扱ってもらえるようになります。


棚田
田んぼ 放牧地
のどかに見える田畑や放牧地も、実は河川や湖沼を汚す原因の一つにもなっています。


アオコが繁殖した川
本来は無色透明なはずの河川の水も、アオコが繁殖すると緑のペンキを流したようになってしまいます。


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