水の話
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地域とともに水源を守る釜房湖

住民・行政・ダム管理者が一体となっての取り組み

 釜房湖には3本の川が流入しています。河川は水だけでなく栄養塩類を含んだ土砂も運び込みます。そこで釜房湖に流入するそれぞれの川の流入部近くに整備されている貯砂ダムで、堆積した土砂を定期的に除去することで湖への栄養塩類の流入を抑えるようにしています。水質の改善や保全には水草が有効であることは知られています。水中の窒素やリンを吸収して生育するからです。そこで湖畔には水草の繁茂しやすい環境も整えられています。
釜房湖は仙台市民の上水道の水源としての水を守るため、人工湖としては初めて昭和62年に湖沼法に基づき指定湖沼に指定されました。以来20年に渡り水質保全計画を定め、水質保全の対策に取り組んできました。その結果釜房湖流域からの排出負荷量は減少してきましたが、湖水の水質についてはなかなか改善が進んできませんでした。理由は山林、農地、市街地といった面源からの汚濁もあるからです。
これら面源からの汚濁を減らすのは容易なことではありません。例えば山林の場合、下草刈りや間伐などによる手入れが継続的に行なわれなければなりません。成長した木は伐採し、新たに木を植えることも必要です。老木よりも成長をしている若木の方が養分をたくさん吸収します。そこで萌芽更新(ほうがこうしん)を手助けするための伐採も行なわなければなりません。こうした作業は多くの人手を必要とし、行政や市民やNPOが協力し合って行っています。
市街地も側溝や宅地、道路の清掃・管理などは市民の協力が欠かせません。農地の場合も肥料や農薬の使用を適性量にすることが汚濁負荷の低減につながります。そのためには作付けする農作物の種類、時期といったことを考慮しなければなりません。


前川
釜房湖に注ぐ前川には、養分を含んだ土砂が湖に入り込まないように貯砂ダムがつくられています。貯まった土砂は除去されます。
碁石川
きれいな流れの碁石川。この上流に釜房ダムがつくられています。この川を見ている限り、釜房湖の水にカビ臭が発生するとは信じられません。


育もう、子々孫々の飲める水
 これまでのダムは治水・利水に重点が置かれて管理されてきました。しかしこれからは環境も大きなテーマとなっています。それも周辺の美しい景観を守るということだけに留まりません。釜房湖のように水道水源としても大切な役割を担っているようなところは、これまで以上に水質の管理が重要となっています。
上流で降った雨をダムで蓄え、それを下流域の人が利用するというのが一般的な図式です。水を守るのは上流域の人々で、下流域の人々がその恩恵に預かることになるのです。水を守るためには水源地域の周辺の環境を守ることが大切となっています。こうした環境を守ることは下流地域の暮らしだけでなく、地域活性化の核となり、水源地の活性化にもつながります。そのためには下流地域の人々の協力も必要となってきます。
釜房湖の水質保全計画の長期ビジョンのキャッチフレーズは「育もう、子々孫々飲める水」です。大気と地上との間を循環することによって、美しい水が供給されるように、上流と下流の人々が交流し合い、お互いに助け合うことで地域の発展にもつながるのです。その媒介となるのが美しい水なのです。

流木の処理 湖畔の清掃活動
釜房湖の水を守るため、市民と行政が一体となって流木の処理や湖畔の清掃活動を行なっています。(写真提供:釜房ダム管理所)

茂庭浄水場 名取川頭首工
釜房湖の水は仙台市の外れにある茂庭浄水場までパイプで送られ、ここで浄水処理されて市民生活を支えています。 下流にある名取川頭首工から引かれた水は農業用水として田畑を潤します。

水辺

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