水の話
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清流ルネッサンスで清流を取り戻す試み

行政と住民の二人三脚

 住民、河川浄化団体、学校、企業、行政など流域ぐるみで綾瀬川の水質改善に取り組もうと、埼玉県は平成18年度から「綾瀬川ワースト1とことん脱却大作戦」を展開しています。そうした中で埼玉県内の綾瀬川流域にある9市と綾瀬川に関する活動をしている30を越えるNPOや市民団体がネットワークを形成し、NPO法人「東京湾と荒川・利根川・多摩川を結ぶ水フォーラム」を中心に結集し、県と協働して綾瀬川の浄化に取り組んでいます。このように古里の川を取り戻したいという思いが大きなうねりとなり、住民の意識が高まり、河川浄化は前進しています。
河畔林の少し上流に、草に覆われた大小二つの中州があります。河川は生態系を復活させるために、より自然に近い状態にするのが理想です。ところが治水上の観点からは大雨が降った時には洪水を防ぐようにしなければなりません。そのため河川改修を行なう場合、こうした中州は取り除き、大雨が降っても十分な流量を確保できるようにするのが普通です。しかし治水面のみで河川改修を行なってしまうと、自然な川の状態が損なわれることもあります。ここでも行政は河床を掘り下げたり、川幅を広げたりと、中州を残す工夫をしました。綾瀬川をきれいにしたいと願う市民は10年以上前から毎月1回、水質調査も行い、結果を行政に報告しています。


蛇行
中州の上流で川は緩く蛇行しています。まさに自然の川そのものといった風景です。


甦る美しい綾瀬川
 綾瀬川は東京都足立区に入り、すぐに伝右(でんう)川と合流します。伝右川の水質は綾瀬川に流れ込む川の中で最も悪く、BODの値が16mg/Lくらいあるとされています。
この合流点に桑袋(くわぶくろ)ビオトープ公園があります。開園されたのは平成17年(2005年)で、公園内には大小二つの池があります。池に使われている水は伝右川の水です。ただし川の水がそのまま使われているわけではありません。
桑袋ビオトープ公園の一角には桑袋浄化施設があります。公園が開園する約1年前に完成した施設です。浄化施設は伝右川の水をきれいにして綾瀬川へ放流するために作られました。ポンプアップした伝右川の水は沈砂室で砂を取り除き、たくさんの石を詰めた槽の中を通すことで水を浄化します。石を詰めた槽の最初の部分で曝気(ばっき)します。1日に浄化する水の量は約19,000m3で、ドラム缶に換算すると約95,000本に相当する量です。この装置で取り除かれるBODは約75%です。水を浄化した後に発生する汚泥は堆肥にして公園内の植物の肥料として使われています。
浄化施設は半地下式となっていて、槽の中をガラス越しに見ることができるようになっています。ただし汚れた水のため視界は利きませんが、小さな魚の姿を見ることができます。ヌマチチブです。ビオトープ公園の池の水は浄化施設で浄化された水の一部です。浄化施設に入り込んだ魚の一部は公園の池に入り込み、繁殖をしています。池にはモツゴやマハゼなどもいます。これらの魚は外から人の手で持ち込まれたのではありません。
日本でも有数の汚れた河川といわれている綾瀬川ですが、決して死の川ではないのです。それどころか川の中には多様な命が息づいています。しかも徐々にではあっても、年々生物の種類も数も増えています。
行政任せにするのではなく、住民自身も川の汚れの原因を作っているとの自覚を持って河川浄化に取り組めば、川は必ず甦るのです。綾瀬川での取り組みがそのことを証明しています。


桑袋ビオトープ公園   合流
3川の合流地点近くにある桑袋ビオトープ公園には浄化した伝右川の水を使った池があり、ヌマチチブをはじめとしたたくさんの小魚が泳いでいます。 東京都に入った辺りで綾瀬川は伝右川、毛長川と合流します。


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