一つの器の中に比重の異なる液体を入れても、比重の大きい液体は比重の小さい液体の下に沈み込むため、混ざり合うことはありません。海水は淡水よりも比重が大きいため、海に流れ込んだ淡水は簡単に混ざり合わないはずです。それにもかかわらず、海の塩分濃度は表層と深層でそれほど大きな差はなく、世界中ほぼ同じ3.4~3.5%です。塩分濃度が均質なのは海の中にあるさまざまな流れによって海水が掻き回されているからです。海に流入した川の水は風や波によって掻き回されます。
波静かな海面にはほとんど動きがないように思われますが、月や太陽の引力の影響による潮の満ち引きがあります。また主として風と地球の自転によって起きる黒潮や親潮などの海流もあります。黒潮は幅の広いところでは約100km、水深600~700mまで及びます。こうした動きは主に表層部から中層部で起きています。さらに深い部分には水温と塩分濃度によって引き起こされる流れがあります。
真水は0℃になると凍りはじめますが、塩水は真水よりもさらに低い温度にならないと凍りません。その結果、海水中の真水部分が凍ることにより、周辺の海水の塩分濃度が高くなって沈み込みます。
北大西洋のグリーンランド沖では低温によって氷がつくられ、氷の周囲にある海水の塩分濃度が高くなって海底へと沈み込みます。こうして海の上から海底へと向かう垂直の流れが生じます。海底へと達した流れは水平方向へ向きを変え、大西洋の底を北米から南米にかけてゆっくりと南下します。さらに南極大陸の近くで同じように沈み込んだ海水と合流し、一部はインド洋へ、大部分はオーストラリア大陸の南を通り、太平洋を北上し北太平洋で上昇します。
上昇した海水は太平洋を南下し、オーストラリア大陸の北部、インド洋を経て大西洋へ入り込んで北上し、再びグリーンランド沖で沈み込みます。こうして約1000年をかけて地球を一巡します。地球を一巡する大循環の流れは水深数1,000mから10,000mの海底とされています。 |