いまから20年ほど前まで、炭酸水のようなものを除き、水そのものが商品として売られることはほとんどありませんでした。しかしおいしく安心して飲める水への関心が高まるにつれ、ペットボトル入りの水が売れだし、今ではさまざまな「名水」が販売されています。これらの水は主に地下水を原料とした淡水です。そうしたペットボトルの水とともに海洋深層水を見かけることがあります。
海洋深層水といっても、基本的には海水で、そのまま飲むことはできません。飲料用にする場合は脱塩します。脱塩した海洋深層水は名水と同じようにまろやかな舌触りと味で、コーヒーやお茶などに使うと味を引き立たせるといわれています。海洋深層水はこうした飲料水だけでなく、さまざまに活用されています。
海洋深層水の低温性を生かして冷房への利用を行なうことができます。汲み上げた海洋深層水はそのまま熱交換器を通すだけでいいのでエアコンのように冷媒を圧縮するためのコンプレッサなどを使う必要がないので、省エネを実現します。また土の中に埋め込んだパイプの中に海洋深層水を通して土の温度を下げることで夏場の高温に弱い野菜の栽培を可能にします。温度差発電の研究も行なわれています。表層の暖かな水で気化しやすい液体から蒸気をつくり、タービンを回して発電します。蒸気は深層の冷たい海水で再び液体に戻します。
低温でしかもバクテリアが少なく清浄であるため、海洋深層水を漁船の水槽に入れておくことで、獲ったばかりの魚介類の鮮度保持にも役立ちます。魚介類の養殖や安定的に出荷するための畜養施設にも利用ができます。 |