水の話
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3000万種もの生物がすむ地球

浄化槽の中での生物多様性

 生物はそれぞれ多様な働きをしています。水を浄化するときも生物が大きな役割を担います。水の汚れのなかでも川や湖、湾のような閉鎖性水域での汚れの中で大きな問題となっているのが有機物による汚れです。
野菜や果物や肉などをそのまま放置しておくと、やがては腐敗し、悪臭を放つようになります。水の中でも同じで、有機物は腐敗します。このとき酸素が消費されて溶存酸素の濃度が低下し、水中の生物が死んでしまいます。こうしたことが繰り返されて水質はどんどん悪化していきます。また生活排水の中には窒素やリンといった栄養塩も含まれています。窒素やリンは植物の成長に必要な要素ですが、これらが水中で増えすぎると藻類や植物プランクトンが異常発生し、あるいはそれらをエサとする動物プランクトンの増加によって大量の溶存酸素を消費します。
落ち葉や動植物の死骸などによって自然の河川にも有機物は流れ込みます。それでも自然の状態が保たれている河川や湖沼の水はきれいです。微生物が有機物を分解しているからです。ただし微生物による河川浄化の機能の限界を超えた有機物が流入すると、自然の力だけで水を浄化することができなくなってしまいます。
水の汚れを防止するためには有機物と窒素やリンの除去が重要となってきます。逆浸透や化学的な処理で除去する方法もありますが、最も多く使われているのが微生物による処理方法です。
浄化槽の処理方法にも微生物が使われています。浄化槽内の微生物の世界でも単細胞生物であるバクテリア、ゾウリムシやツリガネムシといった原生動物、ミジンコやイトミミズといった後生動物などによって、生態系ピラミッドのような食物連鎖が形成されています。
浄化槽を設置して最初に稼動する時、微生物を集めて保存して作られたシーディング剤を投入することで浄化槽の機能を促進させます。また浄化槽の流入水はBOD濃度が非常に高いため、微生物が活動するには酸素が足りません。そこでブロワで空気を送り込みます。一方、酸素のない場所では、代わりに窒素で活動するバクテリアもいます。そこで酸素のない状態にしてやると窒素を分解します。
有機物や窒素を分解する微生物はもともと自然界の中でも汚れた水の中にいます。こうした微生物が何千種あるいは何百万種いるのかは、解明されておりません。仮に有機物や窒素を分解する生物だけを集めることができたとしても、水をきれいにすることはできません。浄化槽のなかでも食物連鎖に似た生態系があるからです。つまり浄化槽にとって大事なことは水をきれいにする生物が存在しやすいような環境を作ることです。


ツリガネムシ
浄化槽内のツリガネムシ。ツリガネムシは、浄化槽内で一般的に存在し、自然環境中でも、よく観察されます。


水田とため池が作り出してきた新たな生態系

 浄化槽を最初に稼動する時、シーディング剤の代わりに田んぼの水をいれていたことがありました。土の中にもさまざまな微生物がいるからです。そして田んぼやため池の中にもさまざまな生き物がいます。
田んぼは多様な生態系を形作っています。稲はもともと自然の湿地帯のようなところを利用して作られていたとされます。湿地にはさまざまな生物がいます。そして本格的な稲作が始まると共に、湿地にいた生物は水田を新たな生態系として数を増やしていったのです。さらに稲作の発展と共に作られていったため池が、生態系の広がりを作り出したのです。
自然は人が手を加えなければ常に変化します。例えば川は洪水などによって流路を変え、自然にできた池は長年のうちに土砂で埋まります。環境が変われば生態系も変化していきます。ところがため池は定期的に水を抜き、溜った土砂を浚(さら)えるなど、人の手が加わります。そのため生態系が変化することなく維持され続けてきました。さらに田植え時期などにあわせて水位が変動するため、多様な水草の生育を可能にしています。新しく作られたため池であっても、他の水域から水生植物や昆虫、魚などの動物が移動してこられるため、種の数も増えてきたのです。
多様な生態系が形作られているということは、食物連鎖の底辺にあたる部分の生物の種類もそれだけ多くなるということです。


カエル タニシ
田んぼ
メダカ、ドジョウ、カエル、タニシなどかつては田んぼへ行けば水辺に関わる生き物をたくさん見ることができました。最近はそうした生き物が減少しています。


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