水の話
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ため池の生物多様性
水を抜いた池は泥田のような雰囲気です。たくさんの魚が泥の中で飛び跳ねています。大きな魚から小魚までいます。浅くなった水際で、小さな白いエビが素早く泥の中に身を隠します。収穫が終わった後に行われる池干しは、かつては日本の各地で見られた秋の風物詩でした。

名古屋で開催されたCOP10
 かつてはどこにでもあったため池や小川ですが、最近はめっきり数が少なくなっています。当然、そこにいた生き物たちの姿も見られなくなりました。こうしたことは私たちの身の回りだけでなく、世界中で起きています。 
特に20世紀に入ってから、人の手による乱獲や開発による生態系の破壊のため、生物種によっては絶滅したり、生息数が大きく減少するなど生物界に大きな異変が起きました。このままでは生態系が大きく崩れ、人類の将来さえ危ぶまれるようになるということで、1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(地球サミット)で生物多様性条約が採択されました。そして生物多様性条約を締約した国が概ね2年ごとに集まり会議を開くことになりました。COPとは国際条約の締約国が集まって開催をする会議のことでCOP10とは10回目の生物多様性条約締約国会議のことを指す略称です。ただしCOPは生物多様性条約だけを指すのではなく、気候変動枠組条約締約国会議も開催された回数を合わせてCOP3などと呼ばれています。2010年に世界から193カ国が集まり名古屋で開催されたCOP10は10回目の生物多様性条約締約国会議のことを指しています。

ため池
農村地帯へ行けば数多く見られたため池ですが、宅地開発などによって数は減少しています。残されたため池も農業用ではなく、大雨のときなどの調整池等に改変されたり、公園の一部になるなど、その役割は変化しています。


生物が増加をすることで減少する生物

 郊外ではたくさんの緑を目にすることができます。大都市の中にあっても、民家の庭や街路樹などに虫や鳥が訪れます。こうした風景を見ただけでは、生物の多様性が損なわれているのかどうか簡単に判断ができません。スズメの数が減っているといわれると、昔に比べ少なくなっているような気がするくらいです。絶滅危惧種に指定されているメダカも、場所や地域によってはたくさんいます。それどころか最近は大都会の住宅地でもタヌキが出没し、山の中ではイノシシ、サル、シカ、クマなどを簡単に目にするようになっています。
植物や昆虫などの数は地域によってかなりの偏りがあります。ある地域にたくさん生えている植物などがあったとしても、他の地域では全く見られなくなっている場合があるのです。野生動物の姿が多く見られるようになった場合でも、実際に数が増えている場合と、本来の生息域の環境が変化したため、人目につく場所へ出没するようになった場合があります。どちらの場合も、生態系のバランスが崩れた結果だと考えられています。つまり、エサとしていた植物や小動物が少なくなって本来の生息していた地域の外へ出てくる場合や、天敵が減少した結果、数を増やしたりしているのです。特定の生物の数が増加しているのは、別の種が減少しているためということもあるのです。



名古屋市には6,000種の生物

 ため池はもともと生物種の多様な宝庫でした。ところが農業形態の変化と農地の市街化が進むと共に、ため池が持っていた本来の機能が失われて、ため池そのものが急速に数を減らしていきました。しかし農業用に使われなくなったため池であったとしても、都市の中では憩いの水辺空間や多様な生物の保全、洪水調整機能としての役割が見直されるようになっていきます。
名古屋市は昭和49年(1974)に「名古屋市ため池環境保全協議会」を発足させ、平成4年(1992)には「ため池保全要綱」を施行してため池の保全を図ってきました。その結果、名古屋市内には大都市としては珍しく現在も111個のため池が残されています。現在、名古屋市内には動物と植物を合わせて約6,000種の生物が確認されています。これらの生物のうち、希少種とされる生き物の多くがため池をはじめとした水辺に関係しています。
ところがため池の生物多様性も時代と共に変化しています。中でも問題となっているのが外来種の増加です。
水面には赤やピンクの美しい花咲かせるスイレン、紫色の花をつけるホテイアオイはウオーターヒヤシンスの別名を持っています。岸辺には黄色の花をつけるショウブ、水中ではオオカナダモや優美な名前のハゴロモモが揺れています。しかしこれらの植物は外来種の代表です。
オオクチバス、ブルーギル、タイリクバラタナゴ、カダヤシといった魚類やウシガエル、ミシシッピアカミミガメなどの動物も外来種として知られています。


ホテイアオイ
水面を覆い尽くす様に花を咲かせるホテイアオイは確かにきれいですが、在来の水草や魚などの生存を脅かします。また、水質悪化の原因にもなりかねません。



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