水の話
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田んぼを通る排水路
田園風景が残る郊外には、いまも農業用水あるいは用水路と呼ばれる水路が流れています。用水とは農業だけではなく、工業、消防、発電、飲用など、何らかの目的に使われる水のことで、そのためにつくられた人工的な水路が用水路です。そして使用した水を流すための水路が排水路です。

田んぼの水管理
 水の入った田んぼが青空や白い雲を映し出しています。田植がはじまり、稲の生長と共に一面に緑が広がっていきます。田んぼに水を入れるためには用水路が必要です。水源は河川やため池などです。用水路と田んぼの間につくられた堰の開閉によって水を引き入れたり、水路の水面が田んぼよりも低い場合は、ポンプを使って汲上げます。
田植の時期に水田に水を入れたなら、そのままの状態で水を維持するわけではありません。稲の生育に合わせて、きめ細かな水管理をおこなう必要があります。水温が低すぎると稲の根の発育に悪い影響を与えてしまうため、一定の水温で稲を保温するようにしなければなりません。そこで水深を深くしたり浅くしたりするなどの調整がおこなわれます。水深が浅いと水温が上昇しやすくなります。しかし風があると逆に冷やされやすくなってしまうので、水を引き入れて水深を深くします。さらに稲がある程度成長してくると水を抜く中干しということもおこなわれます。土を空気にさらすことで、いわゆる消毒と同時に酸素を供給させるのです。そして稲が窒素を過剰に吸収することを防ぎます。中干しの後は再び水を引き入れます。こうした作業を繰り返し、最後に水を抜いて稲刈りがおこなわれます。
このように稲を植えた後の水田では常に水の供給と排水が何度もおこなわれますが、田んぼの水はどこへ排水されるのでしょうか。

水門
川から取水され、樋門によって何本かに分けられた用水は、それぞれ目的の田畑へと流れ、さらに水門によって水は小分けされます。


用水路とは別にある排水路

 田植の前には田んぼの田起こしがおこなわれます。土を柔らかくして稲を植えやすくすると同時に、肥料を鋤き込むためです。鋤き込んだ田へ水を入れて稲を植えるとすぐに、水量の調整がはじまります。田んぼからは泥の混じった水が排水されます。
田んぼはこまめな水管理がおこなわれます。田んぼの中に入れた水を用水へ戻して再び別の田んぼで使おうとすると、例えば十分な水温調整などができなくなってきます。そこで用水路とは別に排水路を設ける必要がでてきます。
農業用水と呼ばれる水路は、正確には灌漑用の水路で、厳密には排水路と区別されています。農業用水は田んぼの間を流れるだけではありません。集落と集落も結んでいます。集落からの生活排水を、そのまま灌漑用の用水へ排水することは基本的にはできません。生活用水を排水できるのは、排水路の方です。しかし排水路も、いずれは河川と合流します。
農業用水も排水路も、季節によって水量が変動します。田畑へ水を供給する必要がないときは、農業用水に水はほとんどありません。一方、排水路も、田んぼからの落水がおこなわれていないときは水量が減少します。ただし、生活排水の放流先となっている場合は、年間を通して一定の水量は流れています。
生活排水が流れ込んでいる排水路は側壁や川底の石などに灰色がかった藻のようなものが見えます。水がきれいに見える場合にも、川底の石を触るとヌルヌルしています。これらは単なる汚れだけではありません。


農業用水
田植の時期になると水が流れる農業用水ですが、田んぼに水を引く必要がなくなると、上流の水門が閉じられ、水はほとんど流れなくなります。

ポンプ
用水の最終目的地である田畑へは、ポンプを使って水を引き入れることが多くなったため、メダカやドジョウなどは田んぼに入り込むことができなくなっています。


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