田植の前には田んぼの田起こしがおこなわれます。土を柔らかくして稲を植えやすくすると同時に、肥料を鋤き込むためです。鋤き込んだ田へ水を入れて稲を植えるとすぐに、水量の調整がはじまります。田んぼからは泥の混じった水が排水されます。
田んぼはこまめな水管理がおこなわれます。田んぼの中に入れた水を用水へ戻して再び別の田んぼで使おうとすると、例えば十分な水温調整などができなくなってきます。そこで用水路とは別に排水路を設ける必要がでてきます。
農業用水と呼ばれる水路は、正確には灌漑用の水路で、厳密には排水路と区別されています。農業用水は田んぼの間を流れるだけではありません。集落と集落も結んでいます。集落からの生活排水を、そのまま灌漑用の用水へ排水することは基本的にはできません。生活用水を排水できるのは、排水路の方です。しかし排水路も、いずれは河川と合流します。
農業用水も排水路も、季節によって水量が変動します。田畑へ水を供給する必要がないときは、農業用水に水はほとんどありません。一方、排水路も、田んぼからの落水がおこなわれていないときは水量が減少します。ただし、生活排水の放流先となっている場合は、年間を通して一定の水量は流れています。
生活排水が流れ込んでいる排水路は側壁や川底の石などに灰色がかった藻のようなものが見えます。水がきれいに見える場合にも、川底の石を触るとヌルヌルしています。これらは単なる汚れだけではありません。
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