駿河湾の西側沿岸部にはたくさんの松林がありますが、この地域に暮らす人々が長い年月をかけて植栽し、育ててきたものです。沼津市の千本松原も、もともとは防潮、防風、防砂のために農民が植えたものですが、戦国時代に戦さのため荒廃しました。その時、この地を訪れた旅の僧が潮風の害に苦しむ住民の姿を見て、1,000本の松を植えたと伝えられています。日本の原風景のような白砂青松の美しい景観は人によって築かれてきたのです。
羽衣伝説で有名な三保の松原にある天女が衣を掛けたとされる羽衣の松は樹齢が650年とされています。ところが1960年代頃からここの砂浜が浸食され松原が消失するのではないかと心配されています。国や県は離岸堤や養浜などの整備を進めています。
これらの砂浜は駿河湾へ注ぎ込む大河によって、山から絶え間なく流れ込む土砂によってつくられたものです。河川から供給される土砂の量と波などの力によって削り取られる土砂の量が同じであれば、砂浜が浸食され、海岸線が後退することはありません。ところが海岸へ運ばれる土砂の量が、運び去られる量よりも少なくなれば、砂浜の浸食が進みます。例えば大井川水系にある千頭ダムは2000年度の国土交通省の調査によると、有効貯水量のうち98%が砂で占められていました。河川から供給される砂の量よりも砂浜の砂を浸食するスピードがはるかに上回っているのです。
砂浜の減少は、先人たちが苦労して守り育ててきた松林にも悪影響を与えかねません。ウミガメの産卵場所もなくなってしまいかねません。松林は津波流速の低減にも、ある程度の効果があることが分かっています。
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