下水道は人が集まる都市を清潔にすることを目的に、最初は生活雑排水と雨水を排除することからはじまりました。やがてし尿が加わり下水として排除するようになりました。次に、汚水を排除するだけではなく、下水を処理して浄化するようになり、さらに浄化処理対象から雨水が除かれていくようになっていきました。下水道の役割として、強化されているのが集中豪雨などに襲われた時、雨水をいかに早く都市部から排除するのかという防災の観点です。
名古屋市では、河川整備と下水道整備の連携を図りつつ、全市域を対象に1時間50mmの降雨に対応する施設整備を進めています。こうした中、平成12年(2000年)の東海豪雨、平成16年(2004年)の局所的集中豪雨、平成20年(2008年)8月末豪雨などにより、市内各所で広範囲にわたり浸水被害が発生しました。これを受け、著しい浸水被害が集中した地域を対象に、原則1時間60mmの降雨に対応する施設整備へレベルアップする緊急雨水整備事業を実施しています。
水環境を悪化させないため、下水道未普及地域では生活排水を浄化槽で処理しています。
汚水処理対策として戦後になって発展してきたのが浄化槽です。いまでは浄化槽も下水道も同じような機能や目的で語られています。当初における浄化槽はトイレの水洗化による生活環境の改善が大きな目的で下水道が普及するまでの代替設備でしかないと考えられていました。しかし水質保全の観点から、浄化槽にも水環境の改善という大きな目的が加わり、し尿だけではなく生活雑排水のすべてをまとめて浄化するようになってきました。さらに最近では河川や湖沼の水質を保全するため、窒素やリンの除去も浄化槽の大きな目的となっています。
浄化槽は汚れを発生源で浄化して放流することができるため、最近は、都市空間にせせらぎを復活させることを可能にする恒久的な設備としての期待も高まっています。
都市における防災の観点からは雨水を排除する下水道のさらなる整備が必要になるのかもしれません。しかし、都市から徹底的に雨水を排除してしまうと、快適な水環境そのものも失われていく可能性があります。これからは下水道か、浄化槽かではなく、それぞれが持つメリットを生かした共存できる方法が大切になってくるのかもしれません。