地方都市における水環境の未来

水の話 No.164 特集 地方都市における水環境の未来 信濃川によってつくられた新潟平野

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日本最長の川と日本最大の稲作地帯

三条市内を流れる信濃川の川幅はそれほど広くなく、日本一の大河には見えません。大正時代に完成した分水路によって三条市へ流れる前に大量の水が日本海へ直接放流されているからです。新潟平野は水害と戦うことによって日本一の米どころとなったのです。

米どころ新潟

 新潟県といえば、作付け面積全国1位の米どころとして知られています。しかもおいしい米としての人気も高く、コシヒカリは新潟産が特に有名です。
 米はもともと南方から伝えられた作物です。そのため高温を好みます。新潟は雪が多く寒い地方というイメージがありますが、夏場の気温は高く、日照時間も長いため稲の生育を促してくれます。また、昼と夜との寒暖差が大きいと、夜間の涼しさに耐えようと養分を蓄えるので味も良くなります。
 新潟は日本でも有数の豪雪地帯です。実は冬に雪がたくさん降ることが、米づくりの条件の一つにもなっているのです。実際、日本での米の作付け面積は北海道や東北地方が上位を占めています。
 雪は自然のダムとも言われ、稲の生育時期に豊富な水を供給してくれます。しかも徐々に融け出していくうちに、大地のミネラル分をたっぷりと含みます。
 新潟が米どころとなった理由として、広い平野の存在を忘れてはなりません。ただし新潟が全国有数の米どころとなったのは江戸時代になってからです。それ以前の新潟の平野部には無数の潟があり、アシなどの生い茂る湿地帯が広がっていました。そこで排水路をつくるなど、新田を開発していったのです。新潟平野は信濃川と阿賀野川の流域に広がり潟湖が数多く点在していました。こうした潟の存在が新潟という県名の由来となったとされています。

交通機関の発達により、地方都市の暮らしも大都市とあまり変わらないものになっています。しかし地方がもっている素晴らしさは、いつまでも変わることなく残して欲しいものです。

新潟県の津南町を流れる信濃川。長野県、山梨県、埼玉県の県境に源を発した千曲川は、新潟県内に入ると信濃川と名前を変えて日本海へと流れます。

信濃川と新潟平野

 源流から河口まで、川は同じ名前で呼ばれるのが一般的ですが、上流と下流で異なる名前を持つ川もあります。信濃川は山梨県(甲州)、埼玉県(武州)、長野県(信州)の3県の県境となっている甲武信ヶ岳を源流とする日本一長い川です。
 ただし、信濃川と呼ばれるのは新潟県内だけで、長野県内では千曲川と呼ばれています。流路の延長は367kmで、信濃川と呼ばれている部分は153km、千曲川と呼ばれているのが214kmです。それでも千曲川も含めて信濃川水系の名称が使われます。1年間に流れ出る流量は163億m3で、ほぼ猪苗代湖の4杯分に当たります。また、北アルプスの槍ヶ岳に源を発して上高地を流れる梓川は、千曲川の支流です。
 山地部分から平地へと流れ下った川は、そのまま平地を突っ切って海へ流れるのが普通です。ところで大河津分水路分派点から河口までの下流部は、広大な新潟平野が形成されています。新潟平野は、信濃川や阿賀野川で運ばれた土砂が海を埋め立て、さらに海岸砂丘によって閉ざされた低平地が広がったものです。そのため、信濃川は平野部に出てから、海岸線と平行するように新潟市まで流れています。

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