地方都市における水環境の未来

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美しい水と共に残しておきたい風景

これからの水質問題は生活排水対策

 水環境にはいろいろな意味が含まれています。その一つが水質問題です。三条市の平成25年度末における汚水処理人口普及率は49.7%です。このうち下水道が18.4%、集落排水が9.8%、浄化槽が21.5%です。三条市の場合、市内を流れる五十嵐川、信濃川、中ノ口川などのBODは環境基準を達成しています。ただし、河川などの公共水域に放流される生活排水のすべてが処理されているわけではありません。
 信濃川水系の平成23年3月末現在の汚濁負荷量のうち一番高いのが生活系排水で59.2%、次が事業場系の28.5%となっています。とはいってもほとんどの調査地点では環境基準をクリアして、水質汚染が問題となっているところはありません。
 これまでは冬の暖房用に各家に備え付けられている灯油タンクから、誤って油が水路へ流出したという事故がたまにある程度で、大きな水質事故や、水質悪化による魚介類への悪影響などはそれほどないようです。むしろ、水害の方が水生生物に対して与える影響が大きいとされています。

街中を流れる水路もこれからの都市にとっては大切な景観です。

水質以外の水環境問題

 水環境として取り上げられる問題の多くは、河川や湖沼などの汚れです。こうした汚れにも、ごみのポイ捨てなどによる水辺景観の汚れと、生活排水などによる水質の悪化があります。水辺景観の改善はごみを拾うことで比較的容易にできますが、水質悪化の改善は生活排水の処理が必要なため、それほど簡単ではありません。また水質を改善し、いくら水がきれいになったとしても、高い護岸が築かれ、あるいは冊で囲まれて人が近づけないようでは、快適な水環境とはいえません。
 水資源の確保も健全な水循環のために必要です。森林、里地里山、水田などは地下水を涵養し、健全な水循環を形成するうえで重要な役割を果たしています。ところが高齢化などによる人手不足や農業の近代化によって里山の荒廃、休耕田の拡大、市街地の拡大に伴う地下水の涵養の低下などが全国的な問題となっています。
 地方には独自の歴史、文化がたくさん残されています。美しい景観があってこそ、史跡はさらに光り輝きます。
 名僧良寛ゆかりの史跡がある国上山も、周辺の水田やのどかな里地里山と一体になってこそ、素晴らしい景観として人々の心を潤してくれます。難しいのは自然保護と水害対策とのバランスです。多様な生物がすみやすいのは自然のままの護岸ですが、それでは水害に弱くなります。水害防止のための河川改修では環境保全型ブロックを使うなど、環境への配慮も必要です。山間部での植林や山の手入れも大切です。

集落の中へ足を運ぶと、自然に近い形の水路を見ることができます。こうした場所も大切に残したいものです。

水環境のあり方は、地方から

 地方には豊かな自然が残されている地域がたくさんあり、きれいな水の流れを見ることができます。それでも水環境についてのさまざまな対策がとられようとしています。
 いま、日本の人口は減少へと向かっています。特に地方で問題となっています。そこで魅力ある地域として人に住み続けてもらえるようにしていく方策を模索しています。魅力ある地域となる大きな要素の一つが環境です。環境の中でも水環境は大きな魅力につながります。今ある水環境が良好であるのなら、それをいかにして次の世代へとバトンタッチしていくのかが大切です。
 川が身近にあって、川の恩恵を受けてきた人達にとって、水は大事なものという意識をもっています。三条市のように、五十嵐川を未来の世代に残したいと考えている市民が多ければ、行政との連携もとりやすくなるでしょう。
 これまで多くの都市や町から、発展の名のもとでさまざまなものが失われてきました。しかし地方では開発の波から守られ、残ったものが、新たな資源となりつつあります。水田、里地里山、水路、鎮守の杜に囲まれた神社、水辺にすむさまざまな生きもの、当たり前と思ってきた風景さえ、地域の新たな資源となるかもしれません。昔から水害に悩まされてきた三条市や燕市などには、土盛りをして母屋よりも少し高い場所に立てられた水倉があります。水害時に備え、食料や大事な生活用具などを入れておくのです。こうした風景も貴重な資源です。
 三条市など、この地域における水環境のあり方は、これからの都市における水環境の手本になっていくことでしょう。

水害に備えた水倉。近くには水害を起こしそうな大きな川は見当たりません。新潟平野の歴史をいまに伝えてくれる遺産です。

弥彦山に連なる山並みの南端に位置する国上山は、江戸時代に良寛和尚が住んだ国上寺があることでも有名です。良寛さんも、このような風景を見ていたのでしょうか。

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