日本人が、一戸建住宅を強く求めるようになったのは、日本経済が急速に成長を始めた昭和30年代(1950年代~1960年代)からでした。住まいを持つと、次はきれいな庭の需要が増えてきました。庭石を入れ、灯篭を建て、蹲踞や飛び石を配置し、マツを中心とした庭木が植えられました。手入れの仕方によって様々な形態になるマツは、庭木の中で最も重要な植物だったのです。他にも、ツゲ、マキ、ツバキなども庭木として植えられました。それらの木は、造園業者によって剪定しながら育てられた枝ぶりのいい「仕立てもの」といわれる木々でした。農村部でも農業の機械化によって、家の前にあった作業のための空間は不必要になり、松を植え、池を掘り、灯篭を建てた庭へと変化していきました。
ところが、20~30年ほど前から庭木の需要が少しずつ変化し始めました。山に生えている、人が手入れをしていない雑木をそのまま庭に植えることが多くなったのです。その結果、造園業者が10年、20年と手入れをして作ってきたマツが売れなくなってしまいました。さらに10年ほど前からガーデニングがもてはやされるようになってきました。そこでは色彩豊かな、珍しい外国の花もたくさん使われています。雑木を植え、色取り取りの花が植えられた庭は、それまでのマツや灯篭、蹲踞といったものを用いてきた日本の庭のイメージとはかなり違ったものとなってきました。
このような庭の変化は、日本人の生活のスタイルが変化したからだといわれています。それまで、庭は眺めることが中心にして作られてきました。ところが、現代の新しい庭には、家主自身が草花の手入れをしたり家族そろってバーベキューを楽しむというように、一種の遊びの空間としての用途が加わったのです。
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日本の庭は、眺めることを目的として作られてきました。樹木や石の大きさ、配置などで、奥行きの感じられる庭を作り出しています。露地のような狭い空間でさえ、ときとして雑木林の中にいるような雰囲気を醸し出します。 |
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