水の話
 
危機的な状況にある日本の自然
少し前まで小川の代表的な魚といえばメダカでした。
でも、最近はメダカのことをよく知らない子供たちが増えています。もっとも、小川そのものが見られなくなっています。
カエルの姿も見かけなくなっています。動物だけではありません。デンジソウのように、かつては水田雑草とされ駆除の対象とされていたのに、いまや絶滅の危機に瀕している植物も少なくありません。

日本の動植物の種類
 野山へ出かけてみると、チョウやトンボが飛び、川の中には魚の姿も見られます。赤、白、黄色といった花々も咲いています。緑の葉をつけた木々の枝には小鳥が羽根を休めています。自然の中に身を置くのはとても気持ちのいいものです。日本は国土の約7割が森林で被われ、豊かな自然に恵まれた国といわれています。こんなにも多くの緑に囲まれた日本で、自然を守ることがなぜ必要なのでしょうか。
周りの景色を眺め、草花、昆虫、魚などの名前をどれだけ答えられるのか試してみませんか。例えば、野山に生えている草木について、種類の違いが分かり、具体的な名前まで答えられる人は意外と少ないようです。チョウやトンボなどの昆虫の名前についても同じです。実は、日本に生育している野生植物の種類は7,000種以上にも達するのです。同じく哺乳動物は約200種、鳥類約700種、爬虫類約100種、両生類約60種、淡水や汽水域にすむ魚類約300種、昆虫は約2万9,000種です。
これらのうち、例えば両生類として日本にいるのはカエル、サンショウウオ、イモリの仲間に分けられます。それが、なぜ60種もいることになるのかといえば、カエルの中にもトノサマガエルやモリアオガエルといった様々な種があるからです。生物を分類する場合、まず動物か植物かといった分け方をします。動物ならば次に背骨があるかどうか、さらに魚か両生類かといったように分類していきます。こうして同じような姿、生活形態ごとに分けたグループが種といわれています。ただし、最近は遺伝子レベルでの研究が盛んとなり、かつては同じ種と考えられていたものが異なる種として分類されたり、違う種と思われていたものが、きわめて近い種として分類し直されるケースもあるようです。
これまでに知られている地球上の生物は、菌類なども含め150万種とされていますが、実際には1,000万種から1億種あるいは2億種はいるともいわれています。地球上には、まだまだ知られていない生物が数多くいるのです。

自然観察園
ひと昔前ならば、どこにでもありそうなありふれた風景が自然観察園として市民の憩いの場所となっています。そこに生えている植物や、集まってくる昆虫などは、たしかに身の周りでは見られなくなりつつあるものも多いように思われます。

急速に種類を減らしている動植物
 日本は南北に細長く、3,000メートルを超える高山もあれば、亜熱帯気候の土地、あるいは乾燥した地域や湿地帯もあります。環境が異なればそこに生息する生物の種類も、当然違ってきます。7,000種以上の植物があるといっても、同じ地域でそれらの全てを見ることはできません。県ごとに見ることができるのは、2,000~3,000種くらいです。植物に対して特に関心を持っていなければ、これだけの植物の名前を知っている人はまずいないはずです。
ところが、いまの日本では、野生の動植物の種の数が急速に減っています。すでに絶滅したものが野生植物では約30種、哺乳動物4種、鳥は13種などです。しかも、たった一つでも残っていれば絶滅したことにはなりませんから、いますぐに何らかの手を打たない限り絶滅の危険に曝されている種は、植物が4種に1種、哺乳類、爬虫類、両生類は3種に1種、鳥類は5種に1種、淡水魚は4種に1種にも及んでいます。
在来の生物が種を減らしている一方で、外国から入ってきて分布を広げている動植物もたくさんいます。池や湖で数を増やし社会問題ともなっているブラックバスを始め、ホテイアオイ、カナダモといった水草や荒れ地に生えるセイダカアワダチソウ、池や用水路で見かけるアメリカザリガニ、ウシガエル、ペットとして飼われていたものが野生化したタイワンリス、ハクビシンなどはよく知られています。こうした移入種が増えると、それまでそこにいた在来の生物が生きられなくなり在来種の絶滅に拍車をかけることになってしまいます。

国内の希少野生動植物の一例(平成9年11月時点・環境庁)

植物
アツモリソウ、ホテイアツモリ、レブンアツモリソウ、キタダケソウ、ハナシノブ

昆虫
ベッコウトンボ、ヤシャゲンゴロウ、ヤンバルテナガコガネ、ゴイシツバメシジミ


イタセンパラ、ミヤタナゴ

アホウドリ、チシマウガラス、コウノトリ、トキ、シジュウカラガン、イヌワシ、オオタカ、オオワシ、オガサワラノスリ、オジロワシ、カンムリワシ、クマタカ、ダイトウノスリ、シマハヤブサ、ハヤブサ、ライチョウ、タンチョウ、ヤンバルクイナ、アマミヤマシギ、カラフトアオアシシギ、ウミガラス、エトピリカ、アカガシラカラスバト、キンバト、ヨナクニカラスバト、シマフクロウ、ワシミミズク、オーストンオオアカゲラ、ノグチゲラ、ミユビゲラ、ヤイロチョウ、アカヒゲ、ウスアカヒゲ、オオセッカ、オオトラツグミ、ホントウアカヒゲ、ハハジマメグロ、オガサワラカワラヒワ、ルリカケス

両生類
アベサンショウウオ

爬虫類
キクザトサワヘビ

哺乳類 イリオモテヤマネコ、ツシマヤマネコ



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