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バッタ、チョウ、トンボといった昆虫を追いかけて遊んだ原っぱ、メダカやフナ、ナマズを捕まえた池や川、カラスの寝ぐらを探し冒険心を膨らませた林・・・。いろいろな環境の中で、それぞれに適した生き方をしている生き物がいます。
こうした生き物が暮らしている環境をビオトープと呼んでいます。
学校や都市の中で、多様な生物が生息できる環境を整えようという動きが盛んとなっています。 |
地域によって異なる種 |
川をきれいにしようという運動が、各地で盛んに行われています。少しずつですが、川の水質は改善されています。そこで、川がきれいになったことを啓蒙し、再び川を汚さないようにとニシキゴイの放流が行われることがあります。ホタルを放している地域もあります。ゴミのポイ捨てをなくし、気持ちよく道路を走ってもらおうと、沿道の野草を刈り取り、コスモスが植えられる場合があります。
こうした行動が、実は生態系にとっては必ずしも好ましいことではないことが分かってきました。生物にはそれぞれの生活にふさわしい環境があるのです。しかも、同じ種であっても、すんでいる地域が異なると、遺伝子も異なる場合があるのです。絶滅が心配されているメダカも、鑑賞用に改良されたヒメダカを除けばメダカという1種しかいないのですが、遺伝子レベルでは10種以上に分けられます。ホタルも同じで、地域によって大きさや光る間隔などが違っています。ニシキゴイやヒメダカなどは人為的に品種改良された生物で、もともとその場所にいた生物ではありません。
遺伝子は貴重な資源です。病気の治療薬として、これまでに利用されてきた植物は2万種にも及んでいます。今後も野生生物から、これまで不可能とされてきた治療薬が見つかる可能性が十分にあるのです。野生の原種が多いほど、多くの栽培種を作り出すことができるのです。そうした研究で重要な働きをするのが遺伝子の研究です。
人の目を楽しませてくれる美しい花も、コスモスのように外国が原産の園芸種が使われる場合が多いようです。しかし、見た目にきれいな花を増やすことは、もともとそこに生えていた野草を減少させ、ひいては貴重な資源である遺伝子の消滅にもつながりかねません。多様な遺伝子は野生生物によって遠い過去から受け継がれてきたものです。例え善意であっても、よその地域から安易に生物を持ち込むと、本来その場所で生活していた同種の生物との交配が行われ、各地域ごとの遺伝子の多様性が失われたり、その土地に昔からいた生き物同士の関係を壊し、結果的に絶滅させてしまう危険があるのです。
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さまざまなタイプをもつビオトープ |
池を作って様々な水草を育てたり水生昆虫や魚を飼い、周りにもいろいろな木や草を植え、人為的な生物の生育環境を作ることがビオトープだと誤解されがちです。しかし、ビオトープを作るということは、それぞれの地域に昔からいる生物のすんでいる環境を整備することです。水田、湿地、河原、里山、池、森、高原、高い山、干潟、鎮守の杜などもすべてビオトープなのです。ところが、ここ何十年の間に、こうした生き物たちが生息してきた環境がどんどん失われています。そこで、もう一度その地域に昔からいた生き物を呼び戻すための環境を復元したり、新たに作り出そうということが盛んに行われています。こうして作られる環境もビオトープと呼ばれているのです。
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