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箱メガネを通して海底を覗いて見ると、砂の中に二つ並んだ穴があちらこちらで見られます。
いわゆるアサリの目です。入水管と出水管の穴がちょうど目のように見えるのです。
ここの水深は約一メートル。潮が引けば砂地となる干潟です。干潟の住民の代表ともいえるアサリは、どんな一生を過ごし、海の浄化とどのように係わっているのでしょうか。 |
アサリの寿命は8~9年 |
ひと口に貝といってもさまざまな仲間がいます。貝は軟体動物のうち、体が貝殻で被われている種類の動物です。貝の中でよく知られているのが二枚貝と巻貝です。二枚貝は足が斧の様な形をしているので分類学的には斧足(おのあし)網と呼ばれています。それに対し巻貝は腹足網と呼ばれています。アワビは二枚貝の片方がなくなった様な形をしていますが、れっきとした巻貝です。
二枚貝のアサリは、北海道から沖縄まで日本全国の主として内湾や内海の干潟や、水深が10メートル以下の砂や泥の中にすんでいます。殻長(殻の長い方の長さ)が3センチにまで成長するのに、地域によって1~3年の期間かかります。寿命は8~9年で、大きなものでは殻長が9センチ位にまで成長します。食用に漁獲されるのは3センチ程度のものが多いようです。
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生まれた場所とは別の場で生活 |
アサリは水温が20℃前後で産卵するため、地域によって春と秋の2回産卵するものもいます。生まれた卵は、約22時間後には0.1ミリほどの大きさの貝殻を持った浮遊幼生となり、海水中を漂い始めます。浮遊するといっても、完全に水の流れに身を委ねているわけではありません。体に細かな繊毛があり、上下方向の移動は行います。こうした生活を2週間ほど続けた後で海底に定着します。潮干狩りをしている場所に生まれたアサリは別の場所へ移動して育つのです。つまり、生まれた場所と生活している場所が異なっているのです。アサリの漁場を守るには、アサリの採れる場所だけでなく、最初に生まれる場所も守らなければならないのです。
大きな河川の河口近くにはアサリの漁場が多いようです。河口の近くは干潟が形成されやすいということや、エサとなる有機物が補給されやすいということもありますが、もうひとつの理由として、塩分の濃度も関係しています。淡水が若干混じり、塩分がやや低めの方が成育にはいいようです。ただし、塩分が低過ぎる場合も成育には適さなくなってきます。その境は海水の塩分濃度よりやや低い2%前後のところです。もちろん、そこには水温も関係してきます。
着底したアサリは、足を使い海底を移動してから砂の中に潜り込みます。深さは殻長の2倍程です。一般に二枚貝の多くは移動をしないといわれています。アサリも稚貝の時期を除けば、自発的に移動することはあまりないようです。移動するとしても、波浪や底土の流動に伴う場合が大半です。 |
アサリの卵
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アサリの幼生
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アサリの稚貝
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アサリは泥場や砂場の中からオスとメスが水管を出し、卵子と精子を同時に放出し、水中で受精します。受精してから2~3週間をプランクトン(浮遊幼生)として生活し、やがて足(足糸)を出して海底に定着し、稚貝になります。
(写真提供:愛知県水産試験場) |
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