かつて全国の川が汚れていったように、四万十川にも危機が訪れかけたことがありました。ただし、その時期は他の地域よりは若干遅れてやって来ました。流域に工場廃水を流すような大きな工場がなかったことと、大規模な住宅開発による人口集中によって、大量の汚水が流れ込むことがなかったからです。しかし、山間部の暮らしも徐々に変化をしていきます。そしてリンなどを含む洗濯洗剤による汚れが問題となりかけて、洗剤の追放運動に取り組んだこともありました。
現在、四万十川で大きな問題となっているのが圃場(ほじょう)整備による泥水の流入です。3月から6月頃にかけて代掻(しろか)き、田植えが行われると、泥の混じった田んぼの落水が大量に流れ込んでしまいます。3月はアユが遡上を始める時期です。泥はアユの餌となる岩についたコケの生育を妨げます。これまで流域の各地で公共事業としての泥水対策も行われてきましたが、解決にはまだ少し時間がかかるようです。
生活排水対策もこれからの課題です。四万十川の水質はBOD1mg/L以下で、昔と比べてもそれほど大きな変化はないといわれています。水量が減ったという声もありますが、データから見る限り変化はないそうです。水量が減ったのではなく山の荒廃による出水で川底が低くなった分、水位が下がったのです。夏場には川の水温が30℃にもなる日があるそうです。
四万十川がこれからも清流であり続けるためには、上流域から下流域までが一体となり、川を守る取り組みを行うことが大切です。四万十市・西土佐地区では、排水量の多い公共施設では高度処理装置を設置しています。少しでも四万十川の水質に近づけてから放流するためです。また、平成に入った頃、地区の全戸に台所排水を少しでもきれいにするため三角コーナーの網を配付しました。川を守る上で大切なことは住民一人ひとりの心がけです。
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ワサビは水が清らかなところでしか育ちません。こうした澄んだ水が集まって清流四万十川の流れを作ります。 |
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