水の話
 
激しい潮流が育てた水軍の郷

海底から湧き上がる潮
 能島の外周のところどころに細い道の跡のようなものが残っています。海城の警護や見張りをするために島を取り囲むようにして作られた武者走りの跡です。しかし大部分は潮に洗われて消滅しています。能島は小さな島ですが波の静かな場所が2カ所あります。1つは船着き場のあった場所で当時の石垣がめぐっています。もう1カ所は小さな入り江状になった場所で船隠しと呼ばれています。入り江の中は本当に穏やかです。ところが入り江の外へ出ると激しい潮流が待ち構えています。大きなうず潮も出現します。それだけではありません。海底から海面へと向かう潮の流れが見られ、この現象を湧き潮と呼んでいます。湧き潮の中心へと潮流体験の漁船は突き進みます。あたかも地下からぼこっ、ぼこっと湧き上がる泉の規模を大きくしたような感じで海面が盛り上がります。大きな湧き潮になると海面が1mも持ち上がるといいます。
目を転じると川の流れのような風景が見えてきます。海の中に1m近い段差が生じています。エンジンを全開にしても船はなかなか前へ進むことができません。ここの潮流の速さは9ノット(時速16.7km)です。水軍たちは帆と櫓だけでこうした場所を航行していたのです。


潮流によって守られてきた謎とロマンと美しい海
 小さな能島には水を確保できるような川も井戸もありません。ところが能島の対岸にあたる大島に水場という地名があります。海岸から少し山の中へ入ると、細い流れがありました。瀬戸内海の海城がある島の対岸には、水場という地名があります。おそらく海城の水はこうしたところで確保していたようです。島へは瓶に汲んだ水を船で運んだと思われますが、ケーブルを渡していたのではないかという説もあります。能島にはまだまだ謎の部分がたくさん隠されているようです。しかし調査が進めば、今後いろいろなことが解明されてくるでしょう。
戦国時代が終わり、やがて海賊たちの海城も姿を消していきましたが、城跡はそのまま残されてきました。城跡を守ってきたのは瀬戸の激しい潮流でした。その速い流れは海が汚れることからも守ってきたのです。瀬戸内海の中でも特に風光明媚といわれるこの地域が美しい海であり続けられたのも潮流の恩恵があったからです。そして今、島の人々はこの海の美しさをいつまでも守るために動き出そうとしています。
みたらしの水
大島に隣接する大三島には海水の中から真水が湧き出すという「みたらしの水」があります。昔はここに神社があり、神がみそぎをするために清水を湧き出させたといわれています。

瀬戸内海


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