水の話
 
山へ入り魚を守る漁師たち

ホタテの乱獲を防ぐ工夫
 常呂漁協ではサロマ湖で生まれたホタテの稚貝をオホーツク海へ放流し3年後に収穫しています。放流するホタテの数は1m2当たり、7個の割合です。一度ホタテの稚貝を放流した場所は、3年目にならなければ収穫作業は行いません。このような4年輪採方式を採用し資源保護に努め、安定したホタテ漁を行っています。
ホタテは春先に産卵し1週間ほどすると海中を浮遊するラーバ(幼生)となり、海藻や網などに付着します。付着して2カ月ほどで殻長1cmほどの稚貝に成長し、海底へ自然落下します。ホタテの天敵はヒトデです。海底にヒトデが多いと稚貝は食べられてしまいます。そこで稚貝を放流する前にホタテの天敵であるヒトデを徹底的に駆除します。
6月になると、サロマ湖で稚貝を採苗し、ザブトンと呼ばれる四角錐の形をしたネットに入れてその年の冬を越させ、翌春にこの稚貝をオホーツク海に地まき放流して、3年後に収穫します。一方サロマ湖では貝殻に穴をあけてロープにくくり付けて水中に吊るす方法も行われています。これを耳吊り養殖と呼んでいます。本来、ホタテは海底で育つのですが、吊るして育てることでヒトデの食害を防ぐこともできます。

採苗 ザブトン
採苗器を湖に吊るしておくと、水中を浮遊しているホタテの幼生(ラーバ)が付着します。それを6月頃に採苗します。 採苗した稚貝をザブトンと呼ばれる四角錐形のカゴに入れて越冬させます。
ポケットカゴ 収穫
ザブトンからポケットカゴへ移しかえます。 採苗から約1年半経ったところでホタテを耳吊りにして、さらに1年間、成長させてから収穫します。
(写真4点:サロマ湖養殖漁業協同組合提供)


海の恵みは森から
 今では安定したホタテ漁が行われていますが、ここまで順風満帆にやってこられたわけではありません。ホタテ養殖の研究を始めてから軌道に乗るまではカキの養殖とサケ・マス漁が中心でした。
サケ・マスの資源を確保するため、常呂漁協はふ化事業にも取り組んでいます。ふ化場は常呂川の下流にあったのですが、よりきれいな水のあるところを求めて、昭和54年(1979年)に常呂川の河口から80km上流にある支流へサケ・マスふ化場を移転しました。
ふ化場を移転した当初は毎秒2.5~3m3あった湧水が4年後には半減しました。稚魚の数も水量に合わせて半減させなければならなくなりました。水量が減少した原因はふ化場周辺の山林の伐採による山の保水力の低下でした。
ふ化場周辺の山林の伐採により湧水の減少に危機感を感じた常呂漁協は、昭和63年(1988年)にこの放置されていた山を購入し、シラカバ54,000本を植えました。シラカバは木材としての価値はほとんどありません。しかし針葉樹と違い広葉樹です。落ち葉が積もり豊かな水を蓄えてくれます。
シラカバ
シラカバは木材としての経済的価値はありませんが、落ち葉が腐葉土となり水を蓄えるため、植林には欠かせない木です。

常呂川
漁師たちが山に木を植えることにより、昔に比べてきれいになった常呂川。この水をもっときれいにしようというのが漁師たちの願いです。


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