川から学ぶ環境問題
平成2年(1990年)の秋、常呂川の河口の岸にサケ・マスが大量に打ち上げられました。原因はサケ・マスのエラに泥がつまり呼吸できなくなったからでした。漁師たちが危惧していたことが現実となったのです。
当時、常呂川の上流域では森林が伐採され、農地としての開発だけではなく、スキー場やゴルフ場の開発計画が進められていました。そうした場所から常呂川へ土砂が流入していたのです。事態を放置しておけば、川から海へ、そしてサロマ湖へと被害は拡大していきます。常呂漁協は森林の開発を最小限にとどめるように求めました。さらに川や海を守るため、積極的に行動しました。開発が計画されていた山を買い取り、木を植えていったのです。常呂漁協はこれまでに約2.2km
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の土地に約60万本の植林をしています。
こうした森を守る活動が認められ、常呂漁協は平成4年(1992年)に漁業団体としては初めての朝日森林文化賞、平成13年には内閣総理大臣賞(緑化推進運動)を受賞しました。漁協創立100周年に当たる平成24年までに100万本の植林を目標にしています。常呂川は未だ清流と呼べるような状態ではありませんが、人の意識が変われば、やがて川も変わってくれるはずです。
サロマ湖は日本で3番目に広い湖だけに、一度汚してしまえば回復させるのに膨大な時間を必要とします。木を植える漁協の活動がこれからもサロマ湖を守ってくれるでしょう。
海、山、川、大陸と全てはつながる
オホーツクの沿岸には毎年冬になると流氷が押し寄せます。アムール川がシベリアの豊かな栄養分を海へもたらし、そこでプランクトンが大発生します。そのプランクトンが海流に乗ってオホーツク海の沖にまでやってくるのです。しかし、海流は海の恵みをもたらしてくれるだけとは限りません。冬には流氷も運んできます。サロマ湖の中に巨大な破壊力で流氷が押し寄せることによって、ホタテの養殖に大きな被害がでることもあるのです。昭和49年(1974年)には第1湖口から流入した流氷が湖面の80%を覆いつくし、ホタテ養殖に大きな打撃を与えたことがありました。
サロマ湖も冬期に湖面が結氷します。そして結氷することによって流氷が流れ込むのを防ぐことができるのです。ところがサロマ湖が結氷する時期が年々遅れています。最近は結氷しない年さえあります。そこで考えられたのが湖口にネットを張り、流氷を防ぐアイスブームです。海も山も川も、そして大陸とさえも自然は大きなつながりを持っているのです。
サロマ湖周辺の漁師たちは自然からの恵みを一方的に受け取るだけではありません。だからこそ山に木を植えてきたのです。いま、海も山もつながっているという考えが全国に広がっています。
サロマ湖内へ押し寄せた流氷。時として圧倒的な破壊力でホタテ養殖施設を破壊することがありました。(写真:湧別町提供)
第1湖口に設けられたアイスブーム。オホーツク海から押し寄せる流氷の重圧は100tにも及びます。流氷の流入を防ぎ、流氷が去った後は湖口から自由に船が出入りできるようにするために考えられたのが、丈夫なネットを張ることでした。(写真:湧別町提供)
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