錦江湾では漁業も盛んです。浅海と深海の魚が同じ網にかかることは珍しいことではありません。タコ漁ではタコつぼのほかに折り畳式の網かごを使った漁も行われています。漁獲量としてはそれほど多くはありませんが、アカエビとも呼ばれる深海にすむナミクダヒゲエビも錦江湾の特産です。ナミクダヒゲエビはトントコ網と呼ばれる小型底引網で捕獲します。船尾から網をつけたロープを約2,000m延ばし、深海の底を這うようにして曳きます。このエビだけを中心に漁獲しているのは世界中で錦江湾だけです。
漁の方法としてはこの他にも巻網、船曳網、刺網、小型定置網、はえ縄、1本釣など魚種によって様々な漁法が行われています。漁法の種類が多いというのは、それだけ魚介類が豊富ということで、海がきれいな証拠です。内湾は波が静かなため、養殖漁業も盛んです。ブリとカンパチの生産量は全国最大で、特にカンパチは全国生産の6割を占めています。
ただ養殖漁業で気をつけなければならないのが、余分なエサの流出などによる水の汚れです。そこで各養殖業者は様々な取り組みを行っています。水に溶けたり沈んだりして海を汚さないように加工したエサを使用し、しかも余分に与えないようにしています。コンブの養殖も同時に行い海水の浄化を試みているところもあります。鹿児島大学では焼酎廃液を混ぜたコンクリート製のタコつぼの実験も行っています。焼酎廃液に含まれる成分に水質浄化に役立つバクテリアが付着しやすくなるからです。 |
|
ナミクダヒゲエビ:4本のひげを束ねると管状になり、海底の泥の中からこのひげを突き出し、シュノーケルのように使うとされています。水深150~400mの水域にすみ、錦江湾以外でも捕獲されることはありますがまとまった数が獲れないため市場に出回ることはありません。
(写真提供:鹿児島大学総合研究博物館准教授本村浩之氏) |
|
ナミクダヒゲエビの漁は小型底引網によるトントコ網という独特の漁法が用いられます。網を海底まで下ろし、網の口を大きく広げて海底は這わせてゆっくりと巻き上げます。
(写真提供:鹿児島大学准教授大富潤氏) |
|