雨の多い地域の草原は人が何も手を加えずに放置しておくと、やがて樹木が生い茂ります。草原を維持しようとすれば毎年枯れた草を取り除き、新しい草を芽吹かせるようにしなければなりません。そこで阿蘇で行なわれてきたのが野焼きです。
草原を維持してきた一番の目的は牛馬の放牧です。野焼きをする事で牛馬のエサとなる草を芽吹かせるのです。また、牛馬につくダニなどの害虫を駆除する役目も果たしています。さらに農家の茅葺(かやぶ)き屋根の材料として使われていたススキを採集したり、堆肥(たいひ)にする草を刈り取るためにも草原は大事な場所でした。
野焼きは重労働です。野焼きをする時は延焼を防ぐため、山と草原との境を10mほどの幅で草刈りをして防火帯にします。これを輪地切りといいます。そして風のない日を選び草原に火を放ちます。野焼きは毎年3月の下旬頃に行なわれます。延焼を防ぐたたき棒を手にした人たちが山の斜面を駆け上ったり下ったりします。北側の外輪山は平坦な地形が多く、山頂部から中腹にかけて野焼きが行なわれますが、急峻な地形の多い南側の外輪山は主に中腹で行なわれます。 |