柔らかな弧を描いて川の両岸を結ぶ石造りのアーチ橋。日本全国に1,800もの石橋があるといわれています。石橋の大半は江戸時代の後期から昭和10年代までにつくられたもので、熊本、大分、宮崎などの南九州に集中しています。
石を下から順に積み上げていくだけではアーチ状にする事はできません。そこで石を積み上げる前に、アーチ状の木を組み立てておきます。組み立てた木枠の上へ台形に切った石を両岸から順に積み上げていきます。最後に橋の頂点となるところへ「要石」をはめ込み、組み立てておいた木枠を取り除けば、アーチ状の部分ができあがります。アーチ状の石組みは、石同士が支え合うために崩れることはありません。後は人が通ることができる高さにまで、アーチ状の両端から石を積み上げ、上を平らにすれば完成です。
なぜ南九州にこうした石橋が多く残されているのでしょうか。その理由の一つとして考えられるのが、材料となる石の確保です。石橋はできる限り軽くて丈夫な石の方がつくりやすくなります。南九州には阿蘇山などの噴火によってできた比較的加工しやすい溶結凝灰岩(ようけつぎょうかいがん)が容易に手に入るといったこともあったようです。溶結凝灰岩は火砕流の堆積物が高温と堆積物自身の重さでくっついて岩になったものです。この時、堆積層の上部は圧力が小さいためあまり丈夫にはなりませんが、厚い層の下部では丈夫な岩が形成されます。石橋がたくさんつくられたことも、火山の恩恵の一つです。 |