水の話
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生命力に優れた護岸の貝
垂直の岸壁にびっしりとカキが張り付いています。潮の満ち干の関係で岸壁に付いたカキのうち半分は水面より上にいます。水面上のカキの表面はすっかり乾いています。カキの生命力はかなり強そうです。

古くから行なわれてきたカキの養殖

 岩場などにゴツゴツと石のようにくっついているカキを素手で取ろうとしても、簡単には剥がすことができません。それでもカキは人の目に触れやすい場所にいるということもあり、古くから食用にされてきたばかりか、養殖も行なわれてきました。カキの養殖はヨーロッパでは紀元前から始まり、5世紀頃にはナポリで盛んに行なわれたといわれています。
 日本でも、江戸時代の初期に広島でアサリやハマグリを浅海で畜養しようと海に竹の簀(す)を立てたところ、カキが付着し、成長したことがきっかけとなりカキ養殖が始まったとされています。もっとも現在のような筏の下に吊るす養殖方法は大正時代になってから始まりました。
 古くから食用にされてきたカキですが、世界中には約100種類、日本にも約20種類ものカキがいます。そのうち、食べられているのは主にマガキで、その他に夏のカキといわれるイワガキなどがいます。この他にスミノエガキ(有明海)、イタボガキ(淡路島・石川県)などが養殖されています。
 イワガキはマガキに比べ倍近い大きさがあり、色も形も異なります。マガキが干潮時に水面上となるような場所にいるのに対し、イワガキは常に水深3m以深の岩礁などにいます。寿命もイワガキの方が長いといわれています。


マガキとイワガキ
日本には約20種類のカキがいて、そのうち食用にされる養殖ガキの多くがマガキ(写真右)です。その他には夏場のカキとして知られるイワガキ(写真左)などがいます。


黒部川と富山湾
カキは潮の満ち引きによって水面の上に出るような場所にも生息できます。


一生を同じ場所で過ごす

 昔から「桜が散ったらカキを食べるな」といわれています。欧米でも2月(February)から9月(September)までの「r」の付かない月にカキは食べるなといわれています。食べられない一番の理由として5~8月頃はカキの産卵期にあたり、味がよくないとされているからです。
 産卵によって放出されたカキの卵子は海中で精子と受精し、しばらく海中を浮遊してから、岩や岸壁などに付着します。そして一度付着すると、動くことなく、一生を同じ場所で過ごします。
 カキはアサリなどと同じ2枚貝ですが、カキの殻は左右で形が異なります。膨らんでいる方が左殻、平らな方を右殻といいます。岩などに固着する時は左の殻を下向きにして立ち上がるような形になります。岩に固着している部分は5mmほどしかありません。その部分からセメントのようなものを出して固着します。成分はカルシウムです。貝柱はアサリやハマグリとは異なり1つしかありません。



栄養状態でオスとメスが決まる

 カキの卵は非常に小さく、0.005~0.006mmほどしかありません。産卵によって水中に放出され、受精しても0.65mm程度の大きさです。受精後約1日で殻が形成されて幼生となり海の中を2週間ほど漂います。種類によって異なりますが、カキはオスとメスに分かれているものや、一つの体にオス、メスの機能を備えているもの、時期によってオスになったりメスになったりするものがあります。日本などにいるマガキは時期によってオス、メスが入れ替わる種類で栄養状態が悪いとオスになり、良いとメスが増えます。そのため、年によってオスが多くなったり、メスが増えたりすることもあります。また産卵期の最初の頃と最後の頃でもオスとメスの比率が変わることもあります。
 カキは漢字で牡蠣と書きます。「牡」はオスを意味する字です。カキの生殖腺は卵巣も精巣も白くて見分けがつかないため、オスしかいないと思われていたからです。しかし実際にはカキの養殖が行なわれる海は栄養分が豊かでメスの割合の方が高くなっています。




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