カキ養殖で最初に行なわれるのが採苗(さいびょう)です。6月頃から9月頃にかけてホタテの貝殻などを海中に吊るし、浮遊しているカキの幼生を付着させます。カキの幼生は養殖カキから生まれたものもあれば自然の状態から生まれたものもあります。
カキ養殖はエサを与えるということがありませんが、潮の干満の差を利用して空気中に稚貝をさらすことがあります。カキは潮間帯にも生息しています。空気中にさらされているときはエサとなる植物プランクトンを摂取することができません。そのことでかえってエサを盛んに摂取するようになるというのです。また、空気中にさらされることで弱いカキは淘汰され、強いカキだけが生き残ります。こうした空気中にさらすことを抑制といいます。
抑制を終えると育成です。カキのエサとなる植物プランクトンは一般に日の光の多い海面近くにたくさんいます。一方、海面近くは日の光によってカキ殻の表面にさまざまな生物が付着しやすくなります。水深が深くなれば付着生物は少なくなりますが、植物プランクトンは少なく水温も低くなり、カキの成長速度が遅くなります。ただし成長速度を抑えることが逆に生産調整にもつながります。こうしたことを考慮し、吊るす深さを調整しながら1年近く育てます。大きさが10cmくらいになるまで育ったところでホタテの貝殻から外して籠に入れ、さらに1カ月ほど海中で育てて出荷します。 |