水の話
メニュー1 2 3 4 5 6次のページ
 
山の恩恵を受ける都市
ダム湖のほとりの林の中に紫色のフジの花が咲いています。萌える緑が一層鮮やかに感じられます。ダム湖へ注ぐ渓流の一つを辿り、さらに小さな沢へと進みます。そこには鮮やかな新緑によって生みだされたような清冽な流れがありました。

富栄養化しつつあるダム湖
 一般的に大都市の水源は山奥のダムに求められます。東京都の南に隣接し、山梨県、静岡県と境を接する神奈川県。東京都に継いで2番目に多い900万人を越える人口を擁しています。人口密度も東京都、大阪府に次いで3番目です。横浜市は日本で2番目に人口の多い都市で、川崎市は京浜工業地帯の中核となっています。ところが神奈川県の面積は47都道府県中42番目の小さな県です。神奈川県の水源となるダムは、相模川(さがみがわ)水系と酒匂川(さかわがわ)水系に4カ所あります。
平成13年に相模川水系の宮ケ瀬ダムが完成したことで、神奈川県の水資源の量の確保は整いましたが、その頃から水質の確保という新たな問題がでてきました。ダム湖でのアオコの発生です。
神奈川県の下水道普及率は都市部で99%ですが、水源保全地域については整備の遅れている地域があります。その結果、窒素やリンの濃度が高く富栄養化状態となっています。
アオコの原因になるのは藍藻類で、富栄養化した湖沼などで異常発生すると、水面が緑色のペンキを流したような状態になります。アオコが湖面を覆うと日光が水中に届かなくなり、水草が光合成を行なえず、水中の溶存酸素が欠乏します。アオコが異状発生した水を水道水に使うと異臭の原因となることもあります。そのため相模湖、津久井湖ではエアレーションで水をかき混ぜ、深いところの水と浅いところの水を入れ替え、水面近くの水温を下げると同時に水面の藻類を光が届かない深いところへ運びアオコの発生を抑えています。アオコの発生を抑えるためには富栄養化を改善しない限り根本的な解決にはなりません。


アオコ発生
相模川水系の上流部では生活排水対策が遅れているため、水源となるダムでしばしばアオコが発生しています。(写真提供:相模原市)


丹沢湖
山で囲まれた丹沢湖。いつまでも水がきれいであって欲しいと、生活排水対策を進めています。


浄化槽整備を促進する自治体
 神奈川県の水源ダムのある市町で高度処理浄化槽の整備が進められています。相模原市は平成18年(2006)と19年(2007)に津久井町、相模湖町、城山町及び藤野町をそれぞれ合併した結果、市内に神奈川県の水源ダムを3つ持つことになりました。市では公共下水道整備を進めていましたが合併によって市の面積が広大となり、そのまま公共下水道整備を進めていくと莫大な費用と長い年数が必要になってしまうということで、浄化槽整備に力を入れることになりました。
公共下水道の整備では、私有地内での工事費用は原則として住民が負担します。それに対し、浄化槽は下水処理場の一部を私有地の中に設置するのと同じようなものです。そのため設置費用も使用料も公共下水道の整備と同じになるようにして、住民の負担を軽くしています。平成21年度(2009)までに88基の整備が完了し、今後は7,000基の高度処理浄化槽を整備する計画です。
もう一つの水源ダムのある山北町でも、ダム集水域を対象にして高度処理浄化槽の整備を進めています。ここでも町が個人に代わって浄化槽の設置から維持管理までを行なっています。設置工事は町が行ない、相模原市と同様に住民の負担を軽くしています。平成20年度(2008)から23年度(2011)までに200基を整備する計画で21年度(2009)までに66基の整備を完了しています。


神奈川県水源環境保全・再生施策対象区域図


メニュー1 2 3 4 5 6次のページ