水の話
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新しい川と人との関わり

新しい里川の形
 埼玉県が推進している水辺再生100プランは平成20年度から23年度の4年間で、県内100カ所で水辺を再生しようという試みです。このうち5カ所はモデル地域として平成21年度に完成しました。
埼玉県の東部は海抜が低く、山間部に水源地を持たない川がたくさんあります。しかも江戸時代から河川改修などが行われ、他の川を水源にしてきた川もあります。そうした川は洪水対策などで水門が閉じられてしまうと、水源になるのは農業用水と家庭排水しかありません。さらに水田が水を使わない季節には、生活排水が唯一の水源となってしまいます。
川口市や鳩ヶ谷市を流れる芝川もそんな川の一つで、かつては完全なドブ川となっていました。この川を昔のような清流にしようと地元の人達が立ち上がったのが平成17年でした。そして平成20年度からは埼玉県の水辺再生100プランのうち、モデル5カ所の一つとなりました。
芝川は市街地を流れる典型的な中小河川です。川に捨てられたゴミを拾い、土手や小さな河原をきれいに整備し植物を植えることは決して難しいことではありません。問題は水質です。
そこで行われたのが、水を浄化させるためのウェットランドの整備です。川の中に設けられたウェットランドに炭素繊維や植物を植えた浮島を設置してあります。ウェットランドの仕切りには自然石が使われています。長さは100mほどですが、明らかに水がきれいになっていることがわかります。よく見ると小魚の姿も見られます。小さな河原に作られた遊歩道ではジョギングを楽しむ人もいます。

浄化実験
ヘドロが堆積した芝川
写真提供:埼玉県
かつてはヘドロが堆積し、悪臭さえ放っていた芝川(写真左)ですが、埼玉県の水辺再生100プランのうちのモデル河川になり、川の中に自然石を利用した仕切りを設け、川の自浄作用による浄化実験が行われています。


見直される多自然工法
 水辺再生100プランの一つとなっている見沼代(みぬましろ)用水東縁地区の整備が平成22年3月に完成しました。見沼代用水は江戸時代に新田開発のために作られた農業用水です。この用水の護岸の一部は江戸時代からの方法で整備されています。石や木材で護岸を作ると隙間ができます。そうしてできた隙間は魚が天敵から身を隠したり、産卵場所となったり、大水のときの避難場所にもなる大切な空間でした。
見沼代用水は昔から多くの魚が生息しています。水面にはエサとなる魚を捕りにきたのか、鴨も泳いでいます。近くの畑にはイタチも住んでいるそうです。魚や水鳥に限らず、さまざまな動物が共存できる環境こそ大切に育てなければなりません。

見沼代用水
江戸時代に農業用水として作られた見沼代用水。江戸時代と同じ工法で作られた護岸が保全されています。


水質改善は上流から
 里川への第一歩は水質の改善です。山間部に水源地があり、人口が集中している集落がなければ、川の水が汚れることもなく、上水道の水源として利用できます。しかし下流へいくほど生活排水などが流れ込み、水は汚れていきます。
埼玉県の河川の汚れの原因は73%が生活排水に起因するといわれています。平成16年度に生活排水処理施設整備構想を策定し、この構想の目標年度である平成22年度、生活排水処理率88%を達成する見込みです。生活排水処理率というのは、浄化槽や下水道などの生活排水処理施設によって処理を行っている人口の割合です。つまり、生活排水を未処理のまま放流する地域を減らしていこうとするものです。
目標が達成されれば河川のBODは低減されます。そして同時に行われている施策の一つが単独浄化槽から合併浄化槽への転換です。生活排水処理率を高めるために単独浄化槽から合併浄化槽への転換を進めていくことが大きな課題となっています。

モデル地区
大切な水を守るため、埼玉県は山間部にモデル地区を設けて単独浄化槽から合併浄化槽への転換を図る事業を実施しました(平成21年度)。


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