水と光と一定の温度があれば、大抵の植物の種は発芽しますが、ある程度まで育ったところで、土に植え替えてやらなければ大きくはなりません。ただし乾いた土では育ちません。
植物に限らず動物も生きていくためには水が必要不可欠です。水辺には多くの種類の植物が生え、虫や鳥が集まり、生態系の中で重要な役割を果たしています。しかし植物も動物も水だけで生きることはできません。
最近はいわゆる水耕栽培で育てられたトマトやミツバ、コマツナなどが市場に出回っていますが、もちろん水だけで育っているわけではありません。水の中にそれぞれの野菜の生育に最適な養分が含ませてあるのです。川や池などの水生植物も、水の中に含まれている養分を吸収して生育しています。

　生物の体はさまざまな物質から合成された化合物で構成されています。例えば人体は皮膚や筋肉、内臓、血液などでつくられていますが、それらの元は炭水化物、タンパク質、脂質などの化合物で、有機化合物と呼んでいます。有機化合物とは簡単にいえば、生命体の主な構成要素となっている、炭素をたくさん含む物質のことで、燃やすと二酸化炭素を発生します。動物の身体を構成する有機化合物は炭素以外に、酸素、水素、窒素、カルシウム、リン、イオウ、カリウム、その他多くの元素によってつくられています。
植物の茎や根、葉、花などはでんぷんやタンパク質、脂質、繊維などの有機化合物で構成され、それらも水素、炭素、酸素、窒素、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、イオウなどの元素からつくられています。
このように動物も植物もさまざまな元素から合成された有機化合物でつくられ、動物は成長に必要な栄養素を有機化合物そのものとして、植物は主に無機化合物として採り入れます。動物は体内で無機物から有機物をつくることができないため、植物がつくり出した有機化合物や他の動物を捕食することで生きているのです。
動物が生きていく上で必要とされる栄養のうち炭水化物、タンパク質、脂質は3大栄養素と呼ばれていますが、いずれも有機化合物です。一方、植物にとって必要な栄養は基本的に無機化合物です。

　自然界では弱い生き物が強い生き物のエサになり、さらに強い生き物のエサにされるという、ピラミッド状の食物連鎖が形づくられています。食物連鎖の頂点にいるものは、海の中ではサメやシャチであったり、あるいはアフリカのサバンナではライオンであったりします。山林ではワシやタカなどの猛禽類です。このように生息している生き物が異なる環境では食物連鎖の頂点に立つ生き物も異なってきます。食物連鎖は弱肉強食の世界を表現しているように思われがちですが、必ずしもそうとはいえません。
ある環境の中で最も強いとされる動物であったとしても、いつかは必ず死が訪れます。動物の死体はやがて分解されて土の一部となってしまいます。もちろん動物だけではなく、植物も寿命がくると枯れて、土に還っていきます。ただし、土に還るというのはばらばらになって形も色もなくなり、土と混ざり合うということだけを意味するのではありません。食物連鎖の頂点に立つとされるどんなに強い動物であっても、土の中にいる小さな生物のエサとなるのです。
土の中にはミミズやダンゴムシなどの土壌にすむ小動物、アメーバのような原生動物、さらに菌類やバクテリアなどさまざまな生物がいます。大雑把にいうと体長が0.2mm以上のものを土壌動物、それより小さなものを微生物とよんでいます。ミミズは有機化合物と土を一緒に食べ、粒状の糞を排出して、土壌改良に役立ちます。
一般に1gの土の中には数千万もの微生物がいるといわれています。地面に落ちた緑の葉、赤い花、黄色い実など、どれも形が崩れて黒く変化していきます。これは有機化合物が微生物によって分解されるためです。こうして出来上がった土は腐植土といわれています。腐植土には植物の生長に必要なさまざまな元素が含まれています。