水の話
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窒素、リンの除去で守る水環境

窒素が過剰になることで起きる弊害
 植物は必要な元素を根から水と一緒に吸収しますが、その時に浸透圧が重要な働きをします。化学肥料とか有機肥料に関係なく、肥料を余分に与え続けていると、窒素やリンの濃度が高まって植物の中の水分と土壌に含まれる水との浸透圧が逆転し、水分が植物から土壌へと奪われる場合も出てきます。当然、植物は枯れてしまいます。
あるいは必要量よりも窒素分が多くなると、植物体が生長し過ぎ、自らの重みに耐えかねて倒れる場合があります。また、有機肥料の場合、十分に分解が進んでいないものを与えると、微生物が増殖するために必要な有機化合物中の窒素が足りず、土壌中の窒素を使い、植物が必要とする窒素が足りなくなる場合もでてきます。
土壌の窒素は硝化菌によって亜硝酸態窒素や硝酸態窒素に変化し、植物に吸収されます。ところが亜硝酸態窒素や硝酸態窒素の量が多すぎると水に溶けて地下水に流入します。こうした水を飲用すると血液中のヘモグロビンと硝酸が反応して、血液が酸素や二酸化炭素と結合できなくなります。その結果、血液が酸素を運ぶことができず、酸欠状態になることがあります。血液も赤色ではなく青色になっています。そのため硝酸態窒素などが大量に含まれた水で溶かした粉ミルクを幼児に与えると真っ青になってしまうことがあり、海外ではブルーベビー病と呼ばれています。また飼料用の作物の中には硝酸を蓄積し易いものがあり、こうしたエサを食べた家畜が酸欠になることもあります。
さらに、地下水にしみ込んだり、雨水などによって河川へ流入すると水環境に悪い影響を与えます。中でも大きな影響を与えるのが窒素とリンです。

川
使い過ぎの肥料が水に溶けて環境へ流れ出すと、川などの水質を悪化させる原因にもなってしまいます。



窒素やリンによって汚れる水
 生活排水で問題になるのがBODの値です。BODは生物化学的酸素要求量とよばれ、一定時間に水中の有機化合物を好気性バクテリアが分解する時に消費された酸素の量で表します。一定時間で消費された酸素の量が多いということは、それだけ有機化合物の量も多いということで、水が汚れているということです。有機化合物はバクテリアによって分解されると、水や二酸化炭素、あるいは無機化合物になります。
そこで下水処理場や浄化槽などはバクテリアの働きを利用して生活排水に含まれる有機化合物を分解、除去してきれいにした水を環境へ放流します。有機化合物が除去された水は確かにきれいです。ところがいくら有機化合物を除去しても河川や湖沼の水質が思ったほど改善されないことがあります。
実はバクテリアによって有機化合物が分解され無機化合物になるということは、植物の生育に必要な栄養分を生産することにもなるのです。栄養分の中でも窒素やリンは植物の生長にとって重要な元素です。BODを取り除いた水に、窒素やリンが含まれ、そこに光が当たると植物プランクトンが光合成によって繁殖をはじめ、あらたに有機化合物が生産されてしまいます。
生活排水から有機化合物を取り除いても、窒素やリンが含まれていたら、思うように水質改善は進みません。窒素やリンは生活排水だけでなく、田畑から流出した肥料や畜産関係にも含まれています。


水生植物
排水路
生活排水が流れている排水路(下)と、きれいな用水(上)。水の汚れの大きな原因は生活排水です。未処理の水が流れ込まないようにすることで、水質はずい分と改善されます。

アオコなど
生活排水からBODを除去しても、窒素やリンが含まれているとアオコなどが発生する原因となってしまいます。



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