有機肥料による栽培は、ほんの数10年前まで長年にわたりおこなわれてきた農業です。有機肥料は雑木林などから出る枯葉、家畜の糞尿、人糞、川や池を清掃したときに刈り取った水草、稲や麦を燃やした灰などを利用してつくられてきました。これらを畑に撒くことによって、作物として土壌から持ち去られた窒素、リン酸、カリウムなどを補給していました。
畑の肥料として昔から使われてきたものに、たい肥やきゅう肥があります。これは家畜の糞と植物などを混ぜてつくります。人糞も、畑の隅の壺に入れ、熟成させてから使われました。また、焼き畑農業もかつては日本中でおこなわれていました。
一方、産業の発展により人口が増加していくと、農地を拡大して食糧の増産をしなければならなくなりました。しかし限られた土地からさらに増産をするためには、同じ広さの農地からの収穫量を上げなければなりません。19世紀になると植物に必要な栄養が無機化合物であることが分かり、リン鉱石、カリ鉱石、大気中の窒素などを原料にした化学肥料がつくられるようになりました。
有機栽培野菜は化学肥料を使わない農法だとされていますが、有機化合物が直接植物に吸収されるわけではありません。有機化合物がバクテリアの働きによって分解されて無機化合物になることで利用できるのです。つまり化学肥料も、有機栽培に使われる肥料も最終的には無機化合物として植物に利用されるのです。
化学肥料の使用によって農業生産は大きく伸びました。畑に撒く肥料の量と、作物が吸収する量が同じであればそれほど問題はないはずです。
ただし、土壌に有機化合物の補給をせずに化学肥料を使い続けると、有機化合物をエサとするミミズのような小動物や有機化合物を分解する微生物が減少します。その結果、土壌の通気性や水はけが悪くなってきます。
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