水の話
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絶滅から復活へ

コウノトリ復活への取り組み

 現在、野生のコウノトリが生息しているのは、ロシアのアムール川中流域や中国の黒龍江省などで、やはり数が減少し、2,500羽から4,000羽程度とされています。減少している理由は生息に適した自然環境の減少が大きいと考えられています。
世界的にもコウノトリが減少している中で、日本で飼育されているコウノトリは繁殖をしていました。当初のコウノトリを復活させる目的は達成されました。次に増えたコウノトリをどうするのかといった議論が行われるようになってきました。方向性としては大きく分けて2つありました。野生へ帰すのか、それとも施設の中で飼育を続けていくのかです。結論は野生へ帰すことになりました。
コウノトリを野生復帰させるには飼育、繁殖させ、放鳥させればいいというものではありません。何よりも重要なことはコウノトリが暮らすことのできる自然環境を整備することです。


幼木の保護
自然へ帰ったコウノトリが、将来巣づくりができるようにアカマツを植栽し、ネットを被せて幼木を保護しています。



繁殖から野生へ

 自然の中から一度姿を消したものを、再び野生に帰すことは容易ではありません。飼育下であれば、害になりそうな餌を与えないようにすることができます。季節に関係なく十分な餌を安定して与えることもできます。自然災害などからも人が守ってやることができます。
コウノトリを野生に帰すといっても、大自然の中へ解き放つのではなく、人々が日々の暮らしを営んでいる場所への放鳥です。人との関係も考えなければなりません。コウノトリが大空を自由に舞っていた時代に比べ、環境は大きく変化しています。人々の暮らしや環境を昔の形に戻すことはできません。
かつて湿地であった場所は水田となり、水田は乾田化されていました。餌となるドジョウをはじめとした魚などの数も減っています。田畑では農薬も使われています。営巣に適した大木も少なくなっています。そうした環境へ放鳥しても、コウノトリが生き延び、繁殖していくことができるのかといった問題がありました。地域づくりから考えなければならないのです。そのためには何よりも、地域の人たちの理解が必要になってきます。



多様な生物と共存できる地域づくり

 コウノトリを野生復帰させるには、放鳥する地域と拠点となる施設が必要になります。そこで拠点施設をつくることになった地域の住民と話し合いが行なわれることになりました。拠点をつくるということは、そこから放たれたコウノトリが周辺の田んぼを餌場にします。農薬を使用している場合は使用を極力控えてもらわなければなりません。
田んぼは米を育てるだけではなく、ドジョウやカエルなど、コウノトリが餌となる動物も生育できる場所にする事が必要になってきます。つまり生態系の復活です。戦後、日本の農業は大きく変わりました。いかに効率よく、より少ない労働力で生産性を高めるのかを目標にして突き進んできました。そのために多くの生きものたちが犠牲を強いられてしまったのは事実です。そしていま、田んぼを生活の場として生きて来たコウノトリをはじめとした多様な生物のためにも使おうというのです。



コウノトリの巣
直径が約2メートルもあるコウノトリの巣。

人工巣塔
田んぼの脇につくられた人工巣塔。


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