水のお値段

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水を汚せば、やがて水道料金にはね返ってくる

買い物をする時、その品物が高いか安いかを頭の中で計算します。しかしシャワーやトイレ、洗濯をする時に、水道料金がいくらかかっているのかを計算しながら使う人はあまり多くはないようです。

水道の種類

 最近の住宅はずい分とお洒落になっています。例えば水道の蛇口一つを見ても、左右にくるくる回す形式のものはあまり見かけなくなりました。さまざまなデザインや機能を持ったものが増えています。
蛇口から出てくる水はすべて同じ水のように思われますが、地域によっては河川水であったり、湖沼や貯水池の水であったり、あるいは地下水といった具合に様々な違いがあります。また、河川を水源としている場合でも、上流部、中流部、下流部など、どこで取水をしているかといった違いもあります。
 山間部などで近くの沢から水を引いている家、あるいは井戸を利用している家などを除き、日本では多くの人が水道を使用しています。ここでいう水道とは水道法によって、導管や工作物などによって飲用の水を供給する施設全体のことを指しています。また同じ水道といっても上水道とか簡易水道、専用水道などと区別されることがあります。
 このうち上水道と呼ばれるものは給水人口が5,000人超の事業で簡易水道は給水人口が5,000人以下の事業のことです。専用水道は寄宿舎、社宅などの自家用水道等で100人を超える居住者に給水するもの又は1日最大給水量が20m3を越えるものを指しています。ただしいずれの水も、水道法の規制を受けており、簡易水道だからといって浄水処理の仕方が簡易だということではありません。
 上水道人口、簡易水道人口、専用水道人口の3つの給水人口を総人口で割った水道普及率は97.5%となっています。そして水道で水を供給する事業者は全国に8,000以上あり、多くが自治体によって運営されています。

水道に使われる河川の水の多くは、上流のダムでいったん蓄えられてから放流された水です。こうした貯水池の水が汚れたならば、浄水場での処理にかかる費用が増えてしまいます。

水道水が供給されるまで

 河川や湖沼から取水された水は用水路や導管などで浄水場まで運ばれます。そして沈砂池で土や砂を沈殿してから濾過、塩素消毒をして配水します。濾過をする時、かつては緩速濾過が主流でしたが現在は急速濾過が主流となっています。
 濾過池では細かな砂の層をフィルターとして池の底に敷き、濾過された水を池の底から抜き取ります。緩速濾過の場合、砂の層を透過する速度は1日で4~5mです。透過速度がゆっくりしているため、砂の層の表面にいる微生物が汚れの分解を手伝ってくれます。
 ところが給水人口が増えるに従い、濾過のスピード化が求められてきました。さらに取水する河川や湖沼の水質の悪化もあって、濾過をする前にポリ塩化アルミニウムなどの薬品を投入してゴミや不純物を凝集・沈殿させたり悪臭を取り除くようになりました。薬品によって細かな汚れをより早く取り除くことができることで、濾過のスピードは1日に100m以上となります。これが急速濾過と呼ばれる方式です。ただし水源の水質が悪化すれば投入する凝集剤や消毒剤などの薬品の量は増えてきます。その結果、カルキ臭などが問題になることがあります。また湖沼の水質が悪化してアオコなどが大量発生すると、いくら浄化しても水道水がカビ臭くなることがあります。そうした時には、オゾン処理や活性炭処理が行われることがあります。
 簡易水道も浄化のシステムは同じです。ただし、地下水を利用している場合は水源となる水自体がほとんど汚れていないため、投入する薬品の量は少なくなります。

安全でおいしい水道水を供給するため、活性炭の層を通すことで原水に含まれる有害物質や臭いを取り除く高度浄水処理を行う浄水場が増えています。

カビ臭の原因は藍藻類

 夏になると、カビ臭い水道水がしばしば問題になります。水道水のカビ臭が日本で初めて問題になったのは昭和20年代でした。昭和40年代には霞ヶ浦、50年代には琵琶湖を水源としている地域の水道水へと広がりました。カビ臭の原因は主に植物性プランクトンである藍藻類が分解したときに発生する物質です。
 日本の川は季節によって流量の変動が大きいため、渇水期に必要な水量を確保できなくなる恐れがあるため、水道水として使われる水は、ダムや堰に貯水します。ただ、貯水すると、水の滞留時間が長くなり、植物プランクトンが発生しやすくなります。
 水源地であるダムや湖沼へ生活排水が流れ込むと、窒素やリンなどの栄養塩類によって藍藻類が繁殖します。そして水温や日射量などの条件が揃うと、活発に光合成をおこない急激に増殖します。特に湖内の水温が上昇する春から夏にかけてカビ臭の発生が多くなります。藍藻類が大量に発生すると水中の酸素が少なくなり、死滅し、分解をはじめます。この時にカビ臭の原因となるジオスミンや2-メチル・イソ・ボルネオールなどの化学物質を発生させます。

三重県の桑名市に明治37年(1904年)、全国では7番目、東海地方では最初につくられ近代水道の貯水池の遺構。レンガづくりで水源は井戸水や湧水でした。 14kmの給水管を敷設し、共用栓や消火栓によって、近隣町村の住民に無償で提供されていました。

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