川や湖沼の水は、昔に比べてずいぶんと透明になったところが増えました。
40~50年前はゴミが落ちているのが当たり前で、川の水は灰色に濁り、悪臭を漂わせるところもありました。
それらの水は最終的には海へと流れていきました。
東京湾で獲れた魚介類は江戸前と呼ばれています。江戸に徳川家康が幕府を開いた当時、江戸城のすぐ近くまで入江が広がっていました。江戸前とは、もともと江戸城の前に広がっていた海を指す言葉でした。やがてその海域で獲れた魚そのものも指すようになり、いまでは東京湾で獲れたすべての魚に江戸前という言葉が使われています。
昭和30年代まで東京湾のほぼすべての沿岸でノリ養殖、アサリやハマグリ漁がおこなわれていました。
昭和35年(1960年)には漁獲量が約19万tありましたが、その後干潟や浅海の埋立て、水質悪化により、現在は2万t以下となっています。
横浜市の八景島は埋立てによってつくられた人工の島です。沿岸部では古くからノリ養殖もおこなわれています。
東京湾は伊勢湾、大阪湾とともに日本3大湾の一つに数えられています。この中で水面面積が一番広いのは伊勢湾で、最小は東京湾です。しかし、容積が一番大きいのは東京湾です。平均水深が約40mと3大湾の中では最も深いからです。
東京湾は神奈川県の三浦半島先端部分の剣崎と千葉県の房総半島先端西側の洲崎を結んだ線の内側を指していますが、神奈川県の観音崎と千葉県の富津岬とに挟まれた中央部分でくびれています。ここより奥を内湾といって、外洋の影響を受けにくくなっています。
東京都には日本の人口の約1割が集中しています。東京湾に直接接しているのは東京都、神奈川県、千葉県ですが、
かつて都心を流れる川はごみ捨て場のようになり、悪臭を放っていたこともありますが、今ではずいぶんときれいになりました。
埼玉県の大部分と山梨県と茨城県の一部地域からも河川を通じて生活排水が流れ込みます。東京湾へ注ぐ河川の流域面積は、これら地域をあわせて国土全体のわずか約2%ですが、そこに暮らす人の数は約3,000万人で日本の総人口の約24%にものぼります。狭い面積に多くの人が住み、経済活動が活発な地域でもあるため、東京湾へは人為的な負荷が集中しやすくなっているのです。
しかも1960年代から70年代にかけて東京湾の面積の2割にあたる2万6,000haが埋め立てられ、8,000haの干潟や藻場が東京湾から消失しました。自然の浄化機能が失われた上、家庭から排出される窒素・リンなどによる海域の富栄養化が進行し、赤潮や貧酸素水塊が発生し、魚介類の斃死(へいし)、漁獲の減少といった水環境の悪化が進みました。特に内湾部へ流入した河川の水は外洋へ流出するまでかなりの日数がかかるといわれ、水質が悪化しやすいのです。
東京湾へ注ぐ河川の流域地域での排水規制や下水道、浄化槽の整備などが進み、東京湾へ流入する汚濁負荷量は削減されてきましたが、まだまだ十分とはいえない状況です。特に内湾部での水質の改善がなかなか進みません。そして一番大きな問題となっているのが汚濁負荷量の約7割を占める生活系の排水です。
第7次総量規制削減計画の目標年度の平成26年度(2014年度)にはCOD(化学的酸素要求量)を177t/日、窒素を181t/日、リンを12.1t/日としています。
これらの汚濁負荷物質は、東京湾全体に平均して分布しているのではなく、湾奥の値が高く、湾口に近づくと低くなっています。湾口に近いほど外洋の影響を受けて汚れが湾の外へ流れやすいからです。